emily

シルビアのいる街でのemilyのレビュー・感想・評価

シルビアのいる街で(2007年製作の映画)
4.1

フランスの古都ストラスブール、6年前に出会ったシルビアを求めカフェで街で彼女を、その面影を探す。見つけた彼女に声をかけようとずっとついていくが、別人だった。。

物語はいたって単純であるが、その描き方は詩的で音や光の使いが素晴らしく、印象にのこるシーンが多い。

冒頭からカーテンの模様越しの夜だったり、固定されたカメラで優雅に主人公が画面に映るずっと前から構えていて、画面から消えたあとも街を映す。人々の日常の会話があり、生活音が溢れている。偶発的な音の重なりが、雰囲気を作る。
時間を贅沢に使いながら、全く無駄に感じさせない情景の美しさがある。

そして男の目からシルビアを想像する。彼が追うのは女性の美しい部分だったり仕草だったりだが、共通点はあまりなく、それを切り取るようにデッサンしていく。シルビアは誰でも良いのかもしれない。いや彼女自体存在しないのかもしれない。

追跡では、小道で迷子になり何度も同じ道に戻ってくる。ジュテームと落書きされた壁が目印のような、役割を果たす。この追跡のシーンもムダに長い。サスペンスのような雰囲気はまったくなく、ただ街がしっかり映される。たまに彼女との距離がすごく近くに重なって見える撮り方も見事。

日にちの区切りが朝からではなく夜からである。そこにもやはり映したいもののまえにかなり余白を作って時間を贅沢につかっているのが分かる。

一歩間違えればただのストーカーの追跡になりかねないが、そこは美しさのハーモニーが別物に仕上げている。その後のものがたりの展開もあまりないからこそ、全体的な映像美や見せ方がしっかり記憶に刻まれる作品だ。そうしてなんだか贅沢に時間を過ごしたような優雅な気持ちを残してくれる。
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