ずどこんちょ

オズの魔法使のずどこんちょのレビュー・感想・評価

オズの魔法使(1939年製作の映画)
3.7
お家に帰る呪文がこのご時世にぴったりでした。ルビーの靴のかかとを3回鳴らして、
「やっぱりおうちが一番、やっぱりおうちが一番、やっぱりおうちが一番……」

外出自粛の今こそ、子供たちと一緒に見て「やっぱりおうちが一番」と唱えてもらいたいものです。

冒頭とエンディングのモノクロ部分を除けば、オズの国に入ってからはカラー映画。
当時まだカラー映画は珍しかったらしく、竜巻に巻き込まれた家の扉を開けると、そこにカラフルな世界がパッと広がる美しさは素晴らしかったです。すごい。面白い。
まさにおとぎの国に紛れ込んだかのような色鮮やかな世界。
マンチキンのカラフルな家々も、ケシの花のピンク色の花畑も、エメラルドの街もカラー映画の魅力をふんだんに発揮して美しく描かれます。赤いルビーの靴もとても可愛いですよね。
衣装、美術ともに可愛らしい世界観はどこを切り取っても絵本のようです。

主演のジュディ・ガーランドはキュートなドロシーを愛らしく好演、歌も素晴らしい歌唱力です。
一番好きだった仕草は、カカシやブリキ、ライオンらと共にオズの国に向かう時に大腕を振って行進していく仕草でした。お約束のように繰り返されるその行進と曲調が実に楽しそうで毎回微笑んでおりました。

カカシ、ブリキ、ライオンのキャラクターも最高でした。
ビジュアルだけ見るとリアルなメイクが気味悪くも見えますが、喋って動くところを見ると知らなかったキャラクターの魅力が溢れてきます。
もしもカカシが動いたら……の動きを忠実に再現したレイ・ボルジャーのパントマイム、錆びて動かないブリキを表現したジャック・ヘイリー、そして喜劇俳優として臆病者のライオンというギャップの笑いをもたらしてくれたバート・ラー。
俳優たちの好演が物語を愉快にしてくれます。
オズの大魔王に大声を出されるたびに、4人で足を震わせるリアクションとか細かい部分で魅力的なんだよなぁ。

そして音楽。
「Over the Rainbow」は伝説の楽曲として今でも音楽の教科書に載るほどの名曲です。つい口ずさみたくなる素敵なメロディですが、映画のクライマックスではなく冒頭で歌われることを映画を見て初めて知りました。
いきなり素敵な歌声で歌い出したジュディ・ガーランドに、当時の人々はきっと驚き、心に残る名曲となったのではないてしょうか。

何より、この作品の公開が1939年。
戦前ですよ。信じられません。チャップリンの『独裁者』より前です。
カラフルな美術も、リアルなメイクも、竜巻に襲われる迫力満点の特殊効果も当時のハリウッド映画の撮影技術の高さが分かります。
映画史に燦然と輝く、レベルの高いファミリー映画でした。