たた

ダークナイトのたたのレビュー・感想・評価

ダークナイト(2008年製作の映画)
4.8
長い・重たい・密度ギューッ
の三拍子で、見応えある場面が盛りだくさんで、いい意味でお腹いっぱいなんですけども

何はなくともヒース・レジャーのジョーカーですよねえ…
何だあれは…
あれだけ特異なキャラなので、多分誰が演じても、
強い印象を残せたことは間違いないとは思うんだけども、
(今話題のjokerは未見です→見ました)
普通に観てるだけでも、ヒース・レジャーが多大な情熱を注いで役を作り込んでいったことを、想像せずにはいられなくて。
あの存在感は、本当にすごいです。
完全に主役。



病院爆破のシーン。
思うように爆発しなくてジョーカーがアレレ?ってなるところ。
あれは、爆破スタッフのミスでタイミングが合わず、
ジョーカーのコミカルとも取れる仕草はアドリブだった、というのは本当でしょうか?
大掛かりな仕掛けの、恐らく撮り直しがきかない緊張感の中でアクシデントを受けて、
あの、ある意味ジョーカーの凶悪な無邪気さが垣間見えるシーンが完成したんだとしたら、
神がかってる…というのは大げさですかね…



終盤、ジョーカーが仕掛ける悪魔の実験。
彼の狂気があぶり出す人間の内面の、
倫理観の矛盾をチクチクと意地悪に刺激するような、
何とも言えないモヤモヤした感覚。
トロッコ問題にも通じる、究極の選択。
倫理の思考実験を具現化したこの場面は、本当に考えさせられてしまいます…

「2隻の船があって、1隻には一般市民が大勢。もう1隻には囚人が大勢。
両方に爆弾が仕掛けられていて、お互いが、相手側の起爆装置を持っている。
制限時間内にどちらも相手を爆破しない場合、両方爆発するようになっている。
つまり、先に相手を殺さないと、自分達もしくは両方が死ぬ」

さてどうしますか…
あまりにも重い罪を背負って生きるか、罪を背負わない代わりに理不尽な死を受け入れるのか。
でも自分はあくまで一員だから、一人では決められない。
仮に起爆装置を押すとしても、その役目を誰が背負うのか。
自分があの場にいたらと思うと…胸がきゅーっと締め付けられる思いです…



【吹替版について!】
ジョーカー藤原啓治さん(クレヨンしんちゃんのヒロシとかアイアンマンの人)の演技が超絶素晴らしく!
あの笑い方や息づかい。
洋画は比較的、吹き替えで観ることも多いんだけど、あんなに魂のこもった演技はちょっと他に思い当たりません。
役と役者、両方を背負って命を吹き込む声優さんの、何たるかを感じずにはいられないのです。

TV版では、洋画吹替声優の代名詞といってもいいくらいの実績がある、大塚芳忠さんがジョーカーを演じてるということで、こっちも素晴らしかった!
テレビということを意識したのかどうか、藤原さんよりも狂気を弾けさせたような、分かりやすい演技を心掛けているような印象を受けました。
個人的には藤原版が好きで、他のキャラの声優さんの安定感も含めると、ソフト版の吹替をオススメしますよ。
たた

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