ウォーターライブラリー

大仏さまと子供たちのウォーターライブラリーのレビュー・感想・評価

大仏さまと子供たち(1952年製作の映画)
4.1
奈良の仏寺や仏像をさまざまの角度から撮影していて、当時の奈良を知る映像資料としても貴重。

しかし、それよりもっと感心したシーンは三笠山のシーン。阿倍仲麻呂の三笠山の詩を観光客に紹介した孤児は、父親の復員をラジオの尋ね人を毎日聴きながら待っている。もう一組の観光客夫婦の夫は復員兵で、戦死した戦友の位牌を手に、日本に帰りたがっていた戦友の代わりにほうぼう旅をしている。その話をした途端に孤児は思わず泣き出してしまう。仲麻呂の詩、戦死した兵士、父を待つ孤児の三すくみの望郷の思いが、三笠山の地で重なり合う構造がたいへん見事だった。