ウォーターライブラリー

オオカミの家のウォーターライブラリーのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
4.8
 ナチスの残党が作った集落を抜け出した少女が、隠れ家で出会った小ブタ二匹に人間の身体と知能を与えるというのがストーリーの大筋(モチーフは『三匹の子豚』だろう)だが、この映画の見せ所は、やはりコマ撮りアニメーションの、見ていて度肝を抜かれるような技術と演出であると見受けられる。

 アニメーションの原理の一つであるメタモルフォーゼが創造主たる人間に批評的に機能するシーンにおいては、平面絵画と立体の区別が特に顕著にあらわれる。例えば、ブタが人間の手足を与えられるメタモルフォーゼのシーンにおいては、壁面絵画の少女が、立体のブタを見下ろしている。自分の改造物たる2匹の人間に少女が食されようとしているシーンにおいては、逆に2匹は絵画となり、いましめられる立体物の少女を見下ろしている。

 このような区別がなぜ批評的であるかといえるか。自らの慰めという利己的な動機によりブタに改造を施した少女と、物体を素材とした驚異的なメタモルフォーゼにより、アニメーション作品を人間という同種族の鑑賞に耐えうるよう“創作”し、それを鑑賞する人間。この2つは、ともに自ら(自らの種族)のために、神であるかのように無邪気に物体を変化させてしまう存在であるということを白日のもとに晒している。つまり、少女の利己的な改造に気付くとともに、そもそもその利己的な改造はアニメーションという技術によって実現されており、そのアニメーションを娯楽等のために創作し消費するのは人間であるということに気付かされるのだ。