ウォーターライブラリー

海がきこえるのウォーターライブラリーのレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
4.9
淡い色合いで描かれる高知の風景に溶け込む一般の人達の生活音が、話し声がとても尊く聞こえてくる。その尊さを受話器を母機ごと持っていって廊下で友達と通話するとこなどのディティールの細かさが裏打ちしている。

過ぎた時を懐かしむ視線の対象として描かれる高知城が、その対象としての価値を発揮しうるほどに説得力を持つのはなぜか。これは高校生活のシークエンスで、高知のなかでは標高の高い背景として、幾度もさり気なく描かれてきたためであろう。さり気なく、しかし日常に溶け込んできた存在として地元を懐かしむ人々の前に立ち現れてくるのだ。

なお、武藤里伽子の晒し上げのシークエンスの、セリフに語らせず表情に語らせる。これは素晴らしかった。