ダニエル・クレイグ氏の初ジェームズ・ボンド作品。
原作007シリーズの第一作の映像化であり、『ドクター・ノオ』から『ダイ・アナザー・デイ』までの緩やかに繋がっていたシリーズから脱却したリブート作でもある。
以前の映画シリーズでも原作を忠実に再現した作品はあったが、本作はそれらと比べてもだいぶ違う。それは本作のボンドが、普段から不敵な笑みを浮かべていたジョージ・レーゼンビー氏以降のそれと違い、意識的に笑う時以外はほとんど悪役にも見えるレベルの無表情だからだろう。そんな荒削りでハードな雰囲気に気品や優雅さが加わることで、ダニエル・クレイグ氏の演じるボンドは今までにない魅力を放っている。
映画全体のテイストもグッとシリアスになっているが、本作は「ダブルオーに昇格したボンドが様々な困難を経て一人前に成長する」までのお話であるため、今までのボンドを否定せずに新しいボンドの肯定する構造なのも面白い。
マッツ・ミケルセン氏演じるル・シッフルの目的が「金を儲けること」に一本化されていて、ボンドの内面描写を絡めたお話が追いやすい一方、ボンド映画が描いてきた「世界規模のアクション超大作」と比べると地に足が付きすぎたお話であることも事実。この辺りは原作小説の本来のテイストに近く、好みが分かれるだろう(私は好きです)。