いの

スケアクロウのいののレビュー・感想・評価

スケアクロウ(1973年製作の映画)
4.3
まずファーストショットからして目を奪われる。下手から上手に向けて、4本の有刺鉄線が斜めに走る(推定角度5度)。その次の層に山なりの荒野のような風景。その後ろにはポツンポツンと木々がある。その風景のなか、奥から手前に向かって歩いてくる人。どんなにかっちょいい映画なのかとほれぼれしていたら、手前に向かって近づいてくる彼の歩き方はそれほど格好よいわけでもなく、しかも有刺鉄線からなかなか抜けだせずこっちにこれないというw このオープニングが今作を象徴しているのだと思う。


ロードムービーで、バディムービー。1973年制作ということは、アメリカン・ニューシネマの晩期にあたるということでしょうか。ジーン・ハックマンとアル・パチーノ、ふたりは身長も性格も対照的なんだけど、そのふたりが信頼しあっていく様子がすんごく良い。可笑しみも最高。最初に入ったダイナーで、ふたりが会話してるときに、ずっと映りこんでいて二人をチラ見するおじさんとか、ハックマンが女性とイチャコラしたいときに映りこむパチーノとか、ふたりが乗車している車のワイパー左右のヘンテコな動きとか、なんか妙な感じにツボってしまう。パチーノ先導での さぁ輪になって踊ろう♪も楽しいし、喧嘩っ早いハックマンがついにはダイナーで笑いを取る場面など、たまたま居合わせた人たちがみ~んな笑顔で、みんなで笑いあうってステキなことなんだなぁと、ほんとうにしみじみそう思った。だから、悲しい場面はなおのこと悲しくなる。終わり方もいい(あの場面での窓口のおばさんの表情もなんかいい)。そっか、通りすがりの人たちも含めて魅力的な映画なんだ。列車が時々映し出されるのもとても好みです。この映画をみて、カラスもきっと笑ったに違いない
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