イスケ

愛しのタチアナのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

いや、コーヒーを飲んでるだけでこんなにジワジワ笑えるもんかねw

レストランに入っても壊れた玩具よろしく注いでは飲むを繰り返してるし、屋外で寒さに震えながらマグカップでコーヒー飲んでるのはめちゃくちゃ笑った。屋外でマグカップの絵面なww


これはふたりの中年男性の初恋を愛でるロードムービーだわ。中身は中学二年生。
相変わらずカウリスマキは厳しさ混じりの優しい作品を作るから好き。

男って中学生ぐらいになると、厨二病を内包した男の美学を持ち始めるよね。

金もない、女と話すような話題もない、ダンスもできない。
タンの吐き方すら知らない男たちが、男だけが扱うような道具を前にうんちくを語る。女に聞こえるようにw
あの気を引こうとする雰囲気は自分も通った道だなぁと思って、気恥ずかしいものを感じるのよ。

男ふたりの車の中では饒舌だったのに女を前にして全く喋らなくのも分かる。
頭で理想の形を考えれば考えるほど、完璧にやろうとすればするほど動けなくなるのは、若かりし頃に経験済みだ。


レストランでほぼ無言で四人で座っていて、「もう寝る」とか言いながらレイノがタチアナのカメラをひょいと持ち去るシーンが良いよね。
「一緒に来てくれ」と言葉では伝えられないけど態度で示すやつ。

残されたヴァルトが気まずさからスチームを気にし出すのは吹いたわw
目の前に缶コーヒーでもあれば、裏の成分をじっくり読み始めてただろう。てか、そこでこそしらこい顔してコーヒー飲めよww

態度で示すと言えば、一旦別れた後に船で合流して、クスクス笑いあってる中年男性たち可愛すぎんか?
タチアナたちもうっすら笑ってたもんね。気持ちは伝わってるよなー。


そして、本作のカティ・オウティネンが明るい!
カウリスマキ作品に登場する彼女の中で一番体温があった。

眠ってるレイノの指からタバコを取って吸う姿がエロティックでもあり、可愛らしさも感じて好きだったな。


夢オチのような不思議な風合いのあるラストはカウリスマキにしては珍しい仕掛けだね。

車で店に突っ込んだところは確実に願望混じりの妄想だとしても、なんとなく現実と妄想の境界線が曖昧な雰囲気が旅の余韻を残す。


マッティ・ペロンパー、まだまだ若くていくらでも活躍できたのに、これが遺作になるのは悲しいね。
イスケ

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