Longsleeper

愛を読むひとのLongsleeperのレビュー・感想・評価

愛を読むひと(2008年製作の映画)
4.0
留学中に現地で見て、今般再鑑賞。
ドイツ語が理解しきれなかったところを消化しつつ、大筋はわかってる中でハンナの行動を見てると、辛い。。。
ただ、なぜハンナが、一生隠し続けたハンデを負うことになったかは語られない。
全てを擲っても隠さなきゃいけないことだったのか、そこに別のトラウマがあったのか。
ハンデを負ったことに加えて、身寄りや友人やパートナーもいなかったことが、克服のきっかけを失った背景だろうと想像はつくけど。
そして、かつて一緒に観たお姉さんが「期待させては突き放して、あの男何なんだ」と怒ってた意味が今ならわかる。。。
そのときは少年時代の主人公と同じ歳くらいだったから、まあ踏み切れない時もあるよねってくらい。
今観ると「少年時代はともかくとしておっさんになったらちゃんと自己開示/ステップインしろよ…」と思う。
家父長感溢れる父親、温かさのないぎこちない家族、ハンナの失踪なんかを経て、(娘に対しても誰に対しても)心を開けない人になってしまったとちゃんと描かれてるけど。
でも本当に人と繋がろうと思うなら、そのくらい大切な人がいるなら、失敗覚悟で相手の懐に飛び込んだり、相手を受け入れる勇気を持つ必要がある。
最後はその兆しが見えたのが唯一の成長。
ハンナは『オデュッセイア』に泣いたり、文学を楽しんだり、感受性も知性も持った人だったと思う。
刑務所の図書館の本の並びが古い本ばかりだけど妙にカラフルで美しい。
本当はあんなにお洒落な本棚なはずないとは思いつつ、新たな世界が拓けたハンナの目線を代弁してるみたい。
もっと学びが深まって、自身の背負う罪について整理できていたら結末は変わった気がする。
多分、薄々罪の重さに気がつきつつも考えないようにしてて、過去に整理をつけるところまでは考えが追いついてなかった。
だから目を背けたような発言をしてしまった一方で、自分を見た主人公の目のなかに幻滅があることには気付いてしまった。
序盤で「謝る必要なんて誰にもない」と叫んでるのが、内容は関係ないが象徴的。
ずっと自分にそう言い聞かせてきたんだという気がする。
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