架空のスコットランド人医師ニコラスの視点でウガンダのアミン元大統領を描く。
多くのドキュメンタリーを撮っている監督らしく、ロケもウガンダで行う徹底ぶり。国会議事堂もエンテベ空港の建物も本物。映像の信頼度が格段に上がる。悪名高い独裁者の描写も史実に基づく残虐さ。
黒人と白人、アフリカと西洋、憧憬と優越、支配と従属。対極でありながら類似点も多いアミンとニコラス。合わせ鏡の二人、という構図が近いのかもしれない。だからこそ関係が深まり、ニコラスは逃れられない恐怖へとはまり込む。
クライマックスは「エンテベ空港ハイジャック事件」が同時進行する。加速する緊迫感の演出はサスペンスとしても見応えがある。ニコラスを命がけで逃がした医師の言葉が重かった。
笑顔のカリスマ性と凄まじい狂気。フォレスト・ウィテカーが見せた落差の演技はオスカーにふさわしい怪演。ジェームズ・マカヴォイも若手ながら確かな演技力を感じさせた。