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DOOR IIIのKSatのレビュー・感想・評価

DOOR III(1996年製作の映画)
3.4
やっぱり黒沢清の映画はツッコミを入れながら観ると楽しいなあ、と思ったが、割と普通に怖かった。

ジョン・カーペンターやトビー・フーパーらのホラーへのオマージュが特徴的ではあるが、実は「CURE」において洞口依子によって展開された、男性中心社会における女性の立場をテーマにした映画でもある。

田中美奈子演じるヒロインの京は、男性に媚びることなく保険のセールスウーマンとして実績を伸ばそうとするが、その過程で中沢昭泰演じる不気味な美青年・美鶴と出会う。この美鶴役が見た目的にもキャラクターとしても物凄く気持ち悪いんだけど、だからといって初対面であからさまに驚くのも失礼すぎる。

美鶴の不気味な魅力に警戒しつつも魅了されていく京。「CURE」では、萩原聖人演じる間宮が出会う人々に暗示をかけて「癒し」を与え、それぞれが心に秘めた憎悪を浮かび上がらせて凶行に及ばせるが、この映画の美鶴は女性たちに性的魅力を振りまいて迫り、彼女たちの秘められた欲望を暴いて掌中に収めてしまう。

出てくる女性たちは皆、社会において自立するために男に媚びを売るか否かの二択を迫られる形となっているのだが、この辺りの表現はジェンダー問題についての議論がより加速した今見ると、どう映るのだろうか。

ラストの展開も「CURE」の変奏ともいえる類似ぶりではあるが、面白いかと言われれば、、、諏訪太朗が出てなかったら、もっとつまらなかったのかもしれない。

1996年当時のパソコンやワープロで何ができたのか見ることができるという意味では、今や貴重な資料なのかも。
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