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ビッグ・ダディのAPOのレビュー・感想・評価

ビッグ・ダディ(1999年製作の映画)
2.0
 主人公ソニー(アダム・サンドラー)は32歳のフリーター。父が弁護士で、ソニー自身もロースクール出身だが弁護士にはならず、料金所で週1のアルバイトをしている。ちなみに、金銭面は株でやりくりしている。いわゆる大人に成長しきれていないダメ人間。
 アパートに同居している友人ケヴィン(ジョン・スチュワート)が仕事の出張で中国へ去ることになった。ある日ケヴィンの息子であるという子供ジュリアンがアパートに訪れる。仕方なく面倒を見ることになったソニーとジュリアンを中心に物語が進んでいくハートウォーミングコメディ作品(?)。

 正直、何故ここまで本作が評価されているのか理解に悩む。しっかりと鑑賞したが全然心打たれることはなかった。

 先に良かった点を一つ挙げておくと、それはジュリアンの見た目が愛くるしい点のみ。苦し紛れの苦言であることは承知している。

 冒頭で主人公がどのような人間なのか掴んで、この人がどう成長するのか、右も左も分からないような幼い子供と生活していく中でどうなっていくのだろうと期待しながら観た。
 ダメ人間が頑張って更生する設定に難癖をつけたい訳ではない。ただ主人公ソニーが終始好きになれなかった。
 ちなみに、アダム・サンドラーはどちらかというと好きな役者です。スタンドアップコメディをやられていた彼に興味が湧いたのは『50 First Dates』を観てから。日本でもリメイクされた作品。

初期設定から、脚本の甘さ、作品の予想される製作陣の狙いまで全てにおいて私にはハマらなかった。詳細は以下。


(以下ネタバレ含む)

 先ず初期設定について。
 弁護士である優秀な父を持つソニーはロースクールは出たものの、その怠惰な性格ゆえ弁護士としてのキャリアには就かず、冒頭でも述べた堕落した生活を送る日々。法律の知識は備えているので、友人にアドバイスなんかもしている。嘘はつくし、ゲスい下ネタ弄りをする、まるで子供同然なソニー。そんなソニーがどうなってゆくのか。。。


 次に脚本の弱さについて。これは大きく分けて2つ。
 
 1. 主人公の成長という部分で期待しながら観ていた分、かなり残念な物語に思えた。
 ジュリアンが突然自身の生活に現れ、ソニーが真っ先に思い付いたのはヴェネッサという恋人との仲直り材料として利用すること。それに失敗すると当初の予定通り福祉課に預けようとするが、ジュリアンの母が亡くなったため、里親が見つかるまでの間面倒をみることになる。そもそも福祉課に自身が父とされるケヴィンであると嘘をついている。法律を勉強していたソニーが取るには馬鹿な手段だと思うと同時に、心底考えが甘いと思った。結局、ジュリアンの誘拐罪として裁判になったが、さすがに有り得ない参考人聴取劇でジュリアンを引き渡すことはなくなった。あの裁判のシーンは逆に笑えた。
 ジュリアンに対して放任主義のように、好きなことを好きなようにやれ、という感じで教えていたソニーだったが、あれはどちらかと言うと育児放棄に近い気がした。父親としてポジティブな一面はひとつも思い出せない。
 常に自分都合でジュリアンを利用していたように映っていたので、これが正解なのか?と疑問に思いっぱなし。

 2. コメディの履き違え。
 ソニーを演じるアダム・サンドラーが醸し出すコメディオーラみたいなものは確かにある。だが、本作でのいわゆるコメディ要素が壊滅的に面白くない。代表的なものを一つあげるとすれば、"フーターズ弄り"。下ネタや下品なことでのお笑いは扱い方を間違えると本当にシラける。幾度となく発せられる"フーターズ弄り"に関しては、しつこさしか残らないし、単なる女性差別発言に近しい。ソニーを好めない要素の一つとなってしまった気がする。
 ジュリアンに対する最初の方の教えなどでも、コメディチックに描写していたが、全然笑えず。


 最後に、予想される製作陣の本作の"狙い"について。
 恐らく話の核である、ジュリアン含めたソニー自身の成長という部分で、視聴者に笑いを交えながらハートウォーミングな気持ちになってもらう、というのが狙いだと思った。が、実際はどうだろうか。
 少なくとも私はその一人には当てはまらずで、話の核であるソニーの成長なんぞどこで感じれば良かったのだろうかという疑問が残ったままである。
 自分勝手で幼稚なソニーは終始"そのまま"であった気がする。ただ、ジュリアンを最終的にケヴィンの下へ送ったのが良しとされているのだろうか。私にはヒーロー気取りのおじさんにしか映らなかったが。なんか鼻に付く感じが拭えず。
 初期設定から脚本と所々の甘さが響いての結果が、本作の"狙い"の杜撰さに繋がっているのではないだろうか。

当時は受け入れられる面白さだったのかな、、、時代かな、、私の頭が本作に関しては堅すぎるのか、、?


 実際に第20回ゴールデン・ラズベリー賞、またの名をラジー賞に、作品、脚本、監督、助演男優、がノミネートされ、アダム・サンドラーは最低主演男優賞を受賞している。この事実を添えて、終わりにする。
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