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湯を沸かすほどの熱い愛のAPOのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
4.0
シングルマザーで娘の安澄をパートで働き育てる双葉。ある日、体調が悪くなり突然余命宣告されてしまうまでに。そこで以前夫と営業していた銭湯を、蒸発した夫を見つけ出し再開することにする。死ぬまでに、娘をはじめとする家族が強く自立して生きていけるように奮闘する双葉。隠された秘密が明かされていくことでより一層本物の愛の形を共有してくれる本作。

血縁なんて関係ない。家族愛を目の当たりにした時、涙が溢れていた。





(以下ネタバレ含む)



鮎子が実母に会いに出掛けた次の日、朝食でしゃぶしゃぶを囲っている際に鮎子が赤裸々に告白した場面が印象に残っている。純情で真っ直ぐな彼女が家族に心開いていくのが尊かった。鮎子を演じた伊東蒼は子供ながらにして周りのビッグネームにも引けを取らない演技をしていた。彼女のひとつひとつのシーンが尊く感じた。
そして、安澄を演じた杉咲花は言わずもがなピカイチだった。感情変化の細かな部分も、その声、表情やアクションで伝わってきた。
父親役のオダギリジョーもダメ男がしっかりしなきゃと生きていく様、娘たちに咎められている様が見事だった。

どこまでも真っ直ぐな双葉。感情が抑えきれなくて取ってしまう犯罪行為も若干見受けられたが、まあ納得できる範囲。人間味溢れる強くて脆くて愛のある母親を宮沢りえは素晴らしく演じていた。役作りもプロフェッショナルだなと感じた。
双葉自身も捨て子で実母とは疎遠という事実が明かされる前に、安澄は双葉の産みの親ではないことを告白する。双葉が母親として安澄のために取ってきた行動ひとつひとつが"熱い"愛だと分かるとき、真実の愛の尊さを思い知る。

どんな生き方をしようと個人の自由だが、双葉が貫いた生き方が家族みんな、そしてふと旅先で出会ったヒッチハイク青年(松坂桃李)とかに与え残した愛は永遠に熱く燃え続けるんだろう。


欲を言えば終盤とかで、安澄が学校生活でどのような変化があったのか、はたまた変化はないのか少しでも分かるシーンがあって欲しかった。まだまだ双葉には及ばないかもしれないが、強く生きている様は他で見受けられたが。

最後は銭湯でのお葬式の後、みんなでお湯に浸かるシーンから、銭湯の煙突から赤い煙が出てきた。
双葉を銭湯で葬った(銭湯で焼いた)という解釈でいいのだろうか。ある種、究極の形で家族に見送られているが、最後の最後に "Wow.." と自分が言うとは思わなかった。
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