ShinMakita

冬の華のShinMakitaのレビュー・感想・評価

冬の華(1978年製作の映画)
3.2
何とか見逃しちゃくれねぇか。ガキがいるんだ…そう懇願する松岡を、加納は刺した。傍らに駆け寄ってきた松岡の幼な子が呆然としているのを見つめながら、その場を立ち去る加納…


15年後、横浜…
出所した〈人斬り秀〉こと加納秀次は、古巣の「東竜会」に顔を出す。組を裏切った兄貴分・松岡を殺して服役した加納を、組長・坂田は歓迎してくれるが、雰囲気はすっかり変わっている。もはや組は武闘派ではなく、坂田も絵画蒐集に熱を上げる好々爺になっていた。舎弟だった南もクルマのディーラーとなり、堅気の印象だ。賭場に顔を出し昔の仲間たちと飲む加納だが、クルマ自慢やカラオケで浮かれる彼らを見るにつけ、時代が変わったことを痛感、足を洗おうかと考えていく。そんな加納の気掛かりは、松岡の遺児・洋子だ。バイオリンを学ぶ女子高生へと成長した洋子を塀の中から見守り援助していた加納。しかし父親の命を奪っておいて、どんな顔をすれば良いのかと、会う勇気が出ないままだ…




「冬の華」



定番のヤクザ映画フォーマットでありながら、あしながおじさん風寓話でもある叙情的作品。倉本聰脚本でクロード・チアリのギター、舞台が横浜、シャガールが小道具というのがなんか無国籍感。はっきり言って東映っぽくないんだけど、そこが大きな魅力。東映ヤクザ映画を期待した観客には受けなかったみたいだけど、映画の出来としても健さん映画としても、最高に近いと思います。個人的には、駅STATION、居酒屋兆治と並ぶ三大高倉健映画の一つに数えたいです。


キャストも豪華で、田中邦衛、藤田進に北大路欣也、小池朝雄に小林亜星。若手の暴力団員は夏八木勲・峰岸徹・寺田農・三浦洋一という濃いメンツ。そしてヒロイン・洋子は池上季実子です。チョイ役の大滝秀治の存在感も大きいし、横浜のメリーさんこと倍賞美津子も良かったなぁ。

…足を洗うと決めた加納が下す、最後の決断。フレンチノワールのようなクライマックスに痺れます。必見。
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