emily

水の中のつぼみのemilyのレビュー・感想・評価

水の中のつぼみ(2007年製作の映画)
3.4
パリ郊外、15歳のマリーは親友アンヌのシンクロの競技会を観に行き、チームのキャプテンのフロリアーヌに魅せられる。マリーも彼女に近づきたくシンクロを始めようとするが、すでに受付は終了しており。。

目線や色彩で危うい心情を綴り、思春期のそれとうまく交差している。不穏な音楽や、バスルームのカーテンのパッションピンク、親友との時間が全てだったマリーもフロリアーヌに出会いその目線の先にはいつも彼女がいるようになる。赤い水着、心情をカモフラージュするようにプールに深く沈み、芽生えた思いとの葛藤が繊細な描写で綴られている。

その切ない想いは彼女だけではない。親友もフロリアーヌもまた彼女と関係のあるフランソワもそれぞれ思春期からではの悩みの葛藤の中におり、マリーの思いもその中の一つでしかない。たまたま相手が女の子であるが、同性愛という深いタッチではなく、普遍的な片思いの悩みとやるせなさを痛みと共に不穏な空気感の中で綴っているのがいい。

水にしっとり濡れた少女達、プールの緑の色彩、白い壁から覗く切ない眼差し、危うく切なく、時には胸が締め付けられる思いを共有しながら、少女か一つ大人に成長していく過程を観察する。それはマリーだけではない。確信犯であるフロリアーヌもまたその階段を登っていくのだ。

手に届かないものを追い求め、木っ端微塵に心を崩された時、そこにいたのは変わらない親友の姿だった。好きな人は裏切る、しかし親友は何があっても変わらない。本当に大事なものに気がつき失い傷つくことで、大人へと成長していく。ラストシーンが無限に広がる未来を彷彿させる。
emily

emily