マヒロ

活きるのマヒロのレビュー・感想・評価

活きる(1994年製作の映画)
4.0
1940年代の中国で、資産家の息子である福貴(グォ・ヨウ)は、ギャンブルにのめり込んだ挙句住んでいた実家の権利まで失ってしまい、身重の妻・家珍(コン・リー)と幼い娘の鳳霞と共に路頭に迷うことになってしまう。影絵芝居の仕事で何とか食い繋ぐ福貴だったが、激動の時代の中でさまざまな出来事に巻き込まれていくことになる……というお話。

政治的に大混乱に陥っていた40〜60年代の中国を描いた作品。中国の歴史物というと煌びやかで重苦しいものが多いイメージだが、今作はあくまで一市民である家族の目線から見た中国という形で、割とショッキングな出来事も起きたりするが、それも人生と言わんばかりにドライに進んでいくのが特徴的。いくらでも感傷的に出来そうなところを敢えて抑えた演出で真摯に描くというのが良かった。
主人公である夫婦は初っ端から夫のギャンブル癖により全てを失うことになるが、実はそれが結局命を救うことに繋がっており、その後もちょっとした選択や入れ違いが身を助けたり、逆に命を奪われることになるという場面が多く、恐らく意図的に“運良く生き延びた”というところが強調されているように思えた。富や名声を得た人でも、これからの未来を担う人でも、時代が変われば簡単に立場がひっくり返ってしまうというのが恐ろしく、当時の中国のめちゃくちゃっぷりが窺える。

いわゆる“文化大革命”が巻き起こるまでに何があったのか?ということも簡単ではあるが知ることが出来るという歴史物としての楽しさもありつつ、あくまで一家族の物語として、何度打ちのめされても立ち上がり生きていく逞しさを描いており、しみじみと感動できる良作だった。

(2023.125)
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