Nana

秋刀魚の味のNanaのレビュー・感想・評価

秋刀魚の味(1962年製作の映画)
4.0
小津安二郎の遺作となったカラー作品。
よくある娘を嫁に出す父のドラマだけど、いろいろ新しい味付けがしてあって最後まで面白かった。
秋刀魚は出てきません!

娘は岩下志麻で若くて美しいけど、声が既に姐さん。
気がきつそうだけど、失恋して涙を流すなど可愛いとこもある。着物も素敵。

息子は佐田啓二。イケメンだけど妻に頭が上がらないとこが可愛い。ゴルフのスイングも美しい。
リーマンがゴルフやり出したのは、この時代なのかな。
冷蔵庫や掃除機のある団地暮らしと、古い池上線が昭和を感じる。
トマトは貸し借りできたみたい。

パパはお馴染み笠智衆。
戦争に行ったらしく、元部下とバーで軍艦マーチを聞いたりする。
「負けて良かったんだよ」なんてサラリと言わせて、ドキッとした。
最後エモーショナルな表情を見せるのが珍しい。

学友のおとぼけ3人組は羽振りがいいけど、中学時代の先生がなぜかラーメン屋になっていて、ものすごく悲しい役。
娘がお馴染み、杉村春子でやはり悲しい役。
酔って帰ってきたお父さんを見て泣いてるなんて…

この時代の風潮か、おっさんがやたら若い女に歳を聞いて24になったら急いで結婚しないと大変みたいなことを言う。
杉村春子が演じたオールドミスは、こうなったら悲惨みたいな意味で出たと思うけど、それも昭和だなぁ。

歳をとって物悲しい男たちと、元気な女たち。
「私、白いバッグ買っちゃうわよ」の岡田茉莉子が良かった。
おっさんと女たちの間でうまくバランスをとってる長男が、昭和の代表的キャラなんだな。

平山が若い娘と再婚した友達に「不潔」なんて、紀子みたいなこと言ってたけど、これって小津安二郎の本音なのかしら。

とんかつ屋やトリスバーが雰囲気が良過ぎ。あんな店で1杯やって帰りたいなあ。
Nana

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