ツクヨミ

父ありきのツクヨミのレビュー・感想・評価

父ありき(1942年製作の映画)
3.0
不変的な父と息子の関係…。
周平は数学教師をしつつ小学生の息子を育てるシングルファーザー。彼らは時が流れても変わらぬ関係を続けていく…
小津安二郎監督作品。戦時中の1942年に公開された本作、雑音で半分以上聞き取れない音声と検閲を受けたせいか不自然に飛ぶ映像が当時の状況を感じさせる。内容的にはまったく戦争のせの字もなくプロパガンダ的側面が無いのは戦後に再編集したからなのか…小津安二郎監督の戦争を感じさせない思惑だろうか。
しかしやはり笠智衆の"父親像"は良い。しっかりした教育を施して二言目には"しっかりやんなさい"と強く励ましの言葉をかける優しさ…日本の父親をやらせたら右に出る者はいないんじゃなかろうか、そう言わせてしまう佇まいと演じ分けに脱帽。
そして今作でも"小津調"は健在。家屋じゃなくても工場や宿舎などでも定点カットで撮っているのは流石、この時代でも監督はしっかりとした芸術的こだわりを見せている。
当時の環境のせいだが聞き取れない音声のほうが多い…全て聞き取れたらどれだけ良いだろうと思ってしまうが、それよりもこの映像が現代でも見れることに感謝。
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