タカシサトウ

ペパーミント・キャンディーのタカシサトウのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

[人生を遡る]

 主人公キム・ヨンホ(ソル・ギョング)の死に始まり、彼の過去を遡る構成。そして遡るにつれ、彼が段々と人間性を回復していくかのような展開。

 ということは、彼が如何にして、人間性や、人間としての尊厳を無くして行ったかを辿ることになっている。

 光州事件で学生を弾圧する側にいたにもかかわらず、ふとしたことで深く傷ついてしまう。そのことをきっかけにして、人間性を失い、彼女ユン・スニム(ムン・ソリ)を傷つけて遠ざける。自分の傷つきが癒えぬまま、段々に追い詰められていく。

 そして、“ペパーミント・キャンディ”だけが、彼女との繋がりでもあり、唯一の希望だったことが分かってくる。そして、死ぬ前の彼女にもまた会う。「市民ケーン」の“ローズバッド”を思い起こした。

 しかし、ラストで、まだ、傷つく前のキム・ヨンホの穏やかな表情と涙を観ると、何とも辛く切ない、でも、納得するような気持になる。

 昔に見て、今回再見。覚えているのは冒頭だけだったが、あらためて観て、何とも辛いが、韓国の傷ついた歴史を振り返るような、よく出来た映画だと思った(2021.8.29)。