emily

腑抜けども、悲しみの愛を見せろのemilyのレビュー・感想・評価

5.0
「生きてるだけで、愛。」が芥川賞候補になった本谷有希子の同名大ヒット戯曲を映画化したもの。
両親が亡くなり、4年ぶりに田舎に帰ってきた澄伽。女優の卵で、かなりの自意識過剰。兄や妹のせいで女優として目が出ないと、周りのせいにして、家族を意のままに支配している。妹はそんな姉の悲壮ぶりをブラックユーモア満載の漫画にしたため、4年前には賞を取っている。その漫画のせいで女優になれないと、妹には特にひどく当たり、自分の思うがままに利用する。澄伽がかえって来た事で、家族にひびが入りはじめ、やがて悲劇を導き・・

吉田大八監督の作品の中でも一番好きな作品。
それぞれの人物像は観客からみたらどこかおかしくて、シュールなんだけど、やはりリアリティの枠から外れておらず、それぞれ愛すべき腑抜けどもなのだ。
田舎の家というしまった空間の中で、澄伽という柱の元に世界が回っている。そこの一人浮いた存在なのが、兄の妻の存在だ。この存在が行き来する異次元空間が全く何の影響を与えない浮いた存在なのが非常に面白い。

利用するだけ利用して、あとはさようなら。でもそれはお互いの利点があって成り立っている。踏み台にしても、家族だから、許されるし、何やかんや言ってもそこには歪んでいても、愛があるのだ。

兄嫁に至っては利用するだけ利用されて、止まった時間に閉じ込められるという、最後までそこに居て全く交わりを許されない存在なのがいとおかしい。
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