Masato

國民の創生のMasatoのレビュー・感想・評価

國民の創生(1915年製作の映画)
3.8
町山智浩の最も危険なアメリカ映画

その1 「国民の創生」

1915年に公開されたアメリカ映画。日本では1924年4月公開。
上映時間165分(長い!)
2016年の東京国際映画祭で公開された「バース・オブ・ネーション」のリメイク元の映画。
リメイクの方は監督の不祥事により公開中止。海外版ブルーレイに日本語が収録されていますので、気になる方は購入をお勧め。

クロースアップ、クロスカッティング、移動撮影など…これまでの映画の基本的な技法を確立させた素晴らしい映画と謳われている反面、KKKを正義の味方とし、一度消滅したKKKを復活させたとんでもない映画として知られている。

102年前の映画だし、165分もあるから退屈じゃない?って思ってたら、意外と面白かった。けど、過度な期待は禁物。
南北戦争の始まりとその後の2部で構成されていて、互いに仲が良い南部の家族と北部の家族が、南北戦争によって関係も恋も引き裂かれていく。その後、幅を利かせた黒人たちが白人を虐げるようになり、KKKを組織し戦っていくという話。
その中には、恋物語や家族の物語など様々な要素が含まれていて、クロスカッティングのおかげで飽きさせない出来だった。
迫力ある戦争シーンや逃走劇や正義の味方が蹴散らすシーンなど、エンタメとして良く出来ている。165分意外とあっという間だった。

しかし、しかーし。この映画の最大の話題である内容。これは、酷すぎる。
捏造、歪曲のオンパレード。白人=善人、黒人=悪人という勧善懲悪。黒人に選挙権なんて殆どなかったし、黒人が白人を虐げてるって、それ逆です。
奴隷がパラダイスなんてとんでもない。
KKKが正義の味方?ただのテロリストだよ。

この映画で黒人が白人にやってることは、大体現実では白人が黒人にやっていたこと。
無知な人がこれを見たら、黒人をジェノサイドしちゃうよコレ。


内容に目を塞げば良かった話なのに…。
因みに、リメイク版は虐げられてきた黒人の反乱を描く映画で、本作とは180度違います。
(内容的に減点して、映画史的に加点してこの評価)
Masato

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