Masato

小悪魔はなぜモテる?!のMasatoのレビュー・感想・評価

小悪魔はなぜモテる?!(2010年製作の映画)
4.2

最初はくっだらねえコメディ映画なのかなって思って見てたけど、わりと高度なことをサラッとアホっぽくやってる映画だということに気付いて凄いなと感じる映画だった。

処女を捨てたと嘘をついたのが広まって、そこからゲイの友達のために善意で偽装エッチを請け負ったら、どんどんと"アバズレ"の噂が広まっちゃってさあ大変!っていう話なんだけど…

軽いノリのコメディの作風で、80年代的な青春映画をサンプリングしながらも、ナサニエル・ホーソーンの緋文字をリメイクのような形で重ね合わせ、アメリカの保守的な地域のオールドファッションな価値観に対する強烈な風刺を描くすんごい映画。

この映画の一番のテーマは緋文字が引用されているように、男尊女卑的な貞操観念の価値観を男性と比較しながら描いているということ。男性が誰かとヤッたという話は持て囃されるのに対し、女性がヤッたという噂はアバズレだとネガティブなイメージとして流布されるという、女性は許されないのに男性は許されることや、男性はそういった女性を蔑視しながらも、体目的で寄ってくる身勝手ぶりを面白おかしく描いていて最高。

これはセイラムの魔女狩りなどの中世から現代まで、古今東西で起きていることであり、現代で大きな問題として語られる、女性のレイプ被害に対して起きる被害者非難に似た構図の問題である。本作ではその原因の根底にはキリスト教の保守的な価値観にあることを痛烈に描いている。なのにオリーブが罪を一身に背負う様は救世主(男性であるイエス)を彷彿とさせるようでもあり、男性の罪をも背負わされてしまう女性の姿をも彷彿とさせるというすんごい高度な皮肉。

逆に男性の苦悩として、童貞を捨てていなければ男性として認められず疎外される。ゲイなどのセクシャルマイノリティは異質として排除されるといった事実も描かれていて、広く行き届いた映画でもある。彼女のついた嘘が皮肉にも保守的な価値観を暴いていくという物語は非常にスカッとする。

日本でも例外ではない問題で、宗教的な価値観はないにせよ日本に置き換えても何ら違和感ないくらいには他人事ではない映画ではある。

こんなテーマをサラッとやっちゃってるのが凄い。ブレックファスト・クラブやセイ・エニシングなどの80年代映画らしさ漂いつつも、しっかりと現代的な物語として描いている秀逸さ。

エマ・ストーンはもう最初から凄い俳優なんだと感じた。演技派としての彼女の演技の源流にはコミカルな演技時の表情の豊かさがあるように感じる。多分監督とかの友達なんだろうけど、フィル・ロードとクリス・ミラーの名前が出てきたのは笑った。
Masato

Masato