ゴシちゃん

近松物語のゴシちゃんのレビュー・感想・評価

近松物語(1954年製作の映画)
4.3
日本映画の巨匠 溝口健二 1954年の作品

傑作の誉れ高いこの作品、何度も観るチャンスはあったのですが、私的にはタイトル含めあまり魅力を感じられず、何だかとっつきにくそうで難しそうでもあり今まで未観賞のままでした。
昨年発売されたデジタル修復版のブルーレイにて今回やっと初観賞。

不義密通は死罪とされた酷い封建時代の物語
ちょっとした誤解が重なった事で、使用人の茂兵衛と主人の妻おさんは、不義密通を疑われてしまいます。
追い詰められた二人は入水自殺を図ろうとしますが、茂兵衛からの愛情の告白におさんは生きる事を決意し
行き場のなくなった二人の逃避行が始まります…

観てみると、観る前に持っていた作品への印象とは大きく違っており
溝口作品の中でも分かり易くとても見やすい作品でした。

ストーリーも登場人物たちもしっかりと作品の中で無駄なく活かされており、大変見応えがあります。
名匠 宮川一夫のカメラワークも惚れ惚れするような素晴らしさ。

小舟の上で、入水自殺を思いとどまりながらも、二人のこれから訪れる悲劇を感じさせる不安定な映像。
峠のお茶屋におさんを残し、姿を消そうとする茂兵衛
茂兵衛を必死に探し山を駆け降りるおさん、置き去りにされたおさんが感じているように、観客にも不安を感じさせるように徐々に広がる俯瞰の映像。
この二つの場面の映像は特に印象に残ります。

日本映画の黄金期の作品
映像はモノクロでスタンダードサイズ、音声はモノラルなのですが
映画芸術の粋をこらし、洗練された魅力を感じさせてくれる時代を越えた大傑作です。

私のように、いつまでも食わず嫌いでいるともったいないですよ(笑)
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