たらこパスタ

シナのルーレットのたらこパスタのネタバレレビュー・内容・結末

シナのルーレット(1976年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

合従連衡を繰り返しながら形骸化した関係を維持し続ける4人と、同一化しそうな極端な閉じた世界を持つように見えるアンジェラとトラウニッツ2人の関係のコントラストが印象的でした。
4人の関係性は基本的に2人-2人で立ち位置的にもやり取り的にも固まっていることがほとんどで、しかしその2人の内訳は滑らかに流動しているように見えました。さらにその流動を追いかける際の視点は度々彼らを周回するのですが、それによってとっくにでている結果というか、そこに何もないという全員がわかっている真実から身を交わすような取り繕ろいを克明に感じました。間をもたす、何かを埋めるためにやろうと思えばいつまででもやり続けられる関係の流動を続けることについて思うのは、逆にそれを全くしないで生活するのは社会生活において限りなく不可能に近い気もして、なのでそういう行為の虚無感が露呈すれば露呈するほど背筋が凍っていく感じがありました。
対するアンジェラとその家庭教師のトラウニッツの関係性は非常に密閉されておりコミュニケーションが2人の間にしか接続されない比率が多いように思いました。また、トラウニッツの奥行きのある表情やアンジェラの言動は無垢さと残酷さが相乗作用を引き起こしながら潜んでおり、魅力がありました!ガブリエルが一室でみたアンジェラがkraftwerkのradioactivityを流しトラウニッツが彼女の松葉杖を使用して踊るシーンは2人の同一化してしまいそうな危うい距離感を硬質かつ冷淡に映し出されているように感じとても惹きつけられたし好きなシーンでした。トラウニッツはもちろん作中で実在する人物なのですが、どこかアンジェラのイマジナリーフレンドのような印象が個人的にして、巧妙に人物を操るという策士な側面により一見、歳の割に早熟しているようにも思えるアンジェラの幼児性が見えているような気もしました。
ラストの終わり方は観た後しばらく咀嚼しきれず突き放されたままラストシーンが頭から離れない...みたいな状態だったのですがDVD封入の小冊子にある公開当時のパンフレットにこれを少し理由づけしてくれるような一節がありました。ので以下で記載します。その内容がアンジェラを精神分析的な観点から見るというものですごくざっくり要約するとアンジェラが両親の浮気が自分のせいだと思ったのは世界が自分中心に回っているという思考の裏返しであり幼児的万能感に近い。その自分が去ることで両親の関係を回復させようとしたのではないか。ということでした。この視点を持って再度鑑賞したくなった。

この作品ではアンジェラ以外もう1人子どもが出てきます。個人的には彼の言動が登場人物の中で最も危なっかしい人物だったかもしれないなと思い観た後に彼のいろんなシーンを思い出しました。
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