たらこパスタ

シュトロツェクの不思議な旅のたらこパスタのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

世界の規模が大きくなればなるほど、空間が等倍拡大されて知らないうちに取り残されて地に足つかず何も掴めなくなっていくような時間の経過に苦しくなります。
容赦なく拡大していく世界とその中で取り残されぐるぐるとまわるシュトロツェクという構造が強烈に印象に残りました。
劇伴音楽が面白くて、アメリカに渡る時の温かみのあるロードムービーな感じのする音楽と車内に差し込む柔らかい暖色光は優しく見えるのに、旅をする3人はどこかその空気に馴染まない温度感を纏っていて、どこかその場所から孤立存在しているような印象でした。そのズレ•浮きをチューニングできた(エーファ→)エヴァと逆に致命的なズレとなっていくシュトロツェクが対照的でした。

タイトルを冠している通り、シュトロツェクという人物に関する話なんだと感じました。シュトロツェクは非常に儚さのある人物で、彼の周りの世界は2度と同じものが復元できない即興性と再現不可能性を強く帯びていて、やや手探りなアコーディオンの音とか夕日の反射とか水に映る他の囚人たちとか、どれも2度と訪れない不安定さと危うさがあったと思いました。時折彼がブルーノは〜と自身のことを他人のように話す時、彼と世界の接地しない距離感みたいなものを感じた場面でした。儚さは魅力的だと思った。

余談ですが、競売の早口、以前英語の発音を紹介してくれるYouTuberの方が題材にしていたのをみたことがあって、本当にこんな感じなんだと驚きでした!
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