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恋に落ちる確率のslowのレビュー・感想・評価

恋に落ちる確率(2003年製作の映画)
4.8
あたかもそこが虚構の世界のように感じられ、全く違う熱源と灯る街のネオンが情緒となって押し寄せ遠去かる。映画に必要なものがそこに存在すれば、それに付属するあらゆるものがそこに生まれる。男と女は、何度でも初めての懐かしさを胸に、待ち合わせの時間を指折り数えることになる。

何度も何度も再構築を繰り返す度に、少しずつ変化していくニュアンス。しかし、書き直したはずの記憶が片隅にでも残っていたのか、時々台詞とは裏腹な表情をするシーンもある。この不思議な現象が前触れもなく放り込まれ、そこだけ急にSF映画のような違和感と緊張感を生み出している。思えば、それはマジックにとても近いのかもしれない。
何かその土足で踏み荒す感じを映画だと言いながら胸が痛むと言ってしまうのが、非現実を現実に近いところで解釈するわたしたちの感じ方そのもので、なるほどなと唸ってしまった。火の無い所に煙は立たないと言うけれど、そもそもその火がまやかしであれば、そこには何もなかったのと同じ。しかし、その煙は目にしみるし、涙も出てしまうのでしょう。この作品の傑作さを伝えられる理解力と語彙力が欲しい。
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