シネラー

それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィのシネラーのレビュー・感想・評価

5.0
"何のために生まれて
何のために生きるのか"
この「アンパンマンのマーチ」の歌詞を
映画のテーマとして落とし込んだ、
傑作のアンパンマン映画を再鑑賞。
幼児向けアニメとは思えない程の
重たく深い内容は、
やはり何年経過しても印象深いものだった。

命の星によって命が芽生えた
人形ドーリィとアンパンマン達の
交流物語となっているが、
アンパンマンの生き方を目の当たりに
自分自身の命の意義に自問自答する
内容がとても素晴らしかった。
突如として命を与えられた事で
自己中心的に喜びを謳歌するドーリィ、
誰かを助ける事で喜ぶアンパンマン、
同じ誕生経緯を持ちながらも
その違いがドーリィ視点で描かれ、
次第に周囲から孤立していく中で
アンパンマンの生き方を知っていく
ドーリィの成長物語としても良かった。
それでいてアンパンマンの生き方を
全肯定していく映画という訳ではなく、
個人的にアンパンマンのキャラクター
で一番好きなのがロールパンナなのだが、
そのロールパンナがドーリィに
「何のために生まれたの?
何をして生きるの?」と問われて
「わからない。」と答えた上に、
アンパンマンの生き方に対しては
「アンパンマンはそうなんだ。
でも私にはできない。」
と言うのがそれぞれの有り方も
感じられる感慨深い場面だった。

アンパンマンとばいきんまんが作った
巨大ロボとの対決というお約束展開も
絶望的な一幕があり、
そこからの「アンパンマンのマーチ」を
男性コーラスでアレンジした
「カンタータ“アンパンマンのマーチ”
~悲壮な戦い~」の挿入と共に
涙腺が刺激される結末だった。
それでいて終始ドーリィに優しく接し、
対決の場面でも自らを犠牲にして
ドーリィを守るアンパンマンが
とても頼もしく格好良かった。
最終的にハッピーエンドな大団円となる
ので安心できるが、
アンパンマンを観ていて
葬列とも言える場面が登場するのも、
命を大切に描いている本作故だと思った。

"何のために生まれて
何のために生きるのか"
この問いに胸を張って答える自信は
残念ながら今は無いが、
今を生きた末に見出だせる答えがある
と思うところだ。
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