しゃび

七夜待のしゃびのレビュー・感想・評価

七夜待(2008年製作の映画)
3.5
河瀬直美監督の映画を撮る姿勢はやっぱり好きだ。最初に脚本があり、予算が付き映像化していくといった定型的な手順を踏まないやり方だが、そこにはやはり純度の高い映像空間がある。

おそらく当人達もどう転ぶか分かっていないだろう映画の展開。なので、観ている側も自然体で映像に身を委ねさえすればよい。

言葉が通じないという状況が全く解決されないまま、進んでいくのも新鮮で良かった。言葉のやりとりが映画を支配してしまうような作品も多い中、言葉を使ったコミュニケーションそのものを寸断して映画を作るというのはなんとも潔い。

ただ一つ感じたのが、河瀬ワールドに演者がどんどんと入り込んでいく凄みのようなものが、この作品にはあまり見られなかった。タイの森の中そのものがワールドになっていて、全体としてふわっとしたイメージで進んで行く。
一つの出来事から、映画のテンションがぐっと一段上がるのだが、『二つ目の窓』や『殯の森』ほどの緊張感を感じることはなかった。

それでも河瀬メソッドと伝統文化、この二つの相性がとてもいいので、安心して観れる作品ではあります。
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