しゃび

こちらあみ子のしゃびのネタバレレビュー・内容・結末

こちらあみ子(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

フランソワ・トリュフォーの『大人は分かってくれない』によく似たラストシーン。

アントワーヌは海辺へ行くあてもなく走るが、あみ子はスキップだ。なぜなら、あみ子はアントワーヌほど、置かれた状況に自覚的じゃないから。

『大人は分かってくれない』は、社会から断絶された子供を描いたが、『こちらあみ子』は社会そのもののアトム化が描かれている分、より深刻だ。

「応答せよ応答せよ、こちらあみ子」

トランシーバーに語りかけても、その声は届かない。

あみ子の声だけではない。

お父さんの声
お母さんの声
お兄ちゃんの声

みんなが応答願っているけど、声はどこにも届かない。

家族の声は、社会に届かない。
家族は子や妻の声を聞く余裕がない。

「怖い怖い怖い。お兄ちゃん、助けて怖いんじゃ。」

助けを求めると、お兄ちゃんはやってくる。
人は助けを求めれば手を差し伸べられるのだ。

しかし、人は簡単に助けを求められるほど、強くはないし、そもそも自分のことを分かっていない。

「おーい、まだ冷たいじゃろ。」

他人の何気ない声かけが人を救う。
人は人に少しづつ見守られながら生きている。

愛とはそのような些細なものの積み重ねなのだと思う。
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