映画の登場人物には、できるだけ「あっけらかん」としていてほしいと思う。
多くのことを背負っている人は、
背負っていることを隠そうとするものだ。
人生経験豊かな銀座のバーのママさんが努めて明るいのは、そういうことだと思う。
でも映画は深みを出そうとして、とかく逆のことをする。「多くのことを背負ってます」感をわざわざ演出する。
残念ながら日本映画は、特にその傾向が強い。粋なようで無粋な演出だ。
『オーファンズ・ブルース』のような、後日談的なストーリーは、とりわけ「含ませ芝居」になりやすい。そして実際、この作品も含ませ傾向にあるのだが、不思議と鼻につかない。
おそらく、主人公のエマに含みが少ないからだろう。
「健忘」という設定がいい。
含みの多いストーリーでも、主人公本人は多くのことを忘れてしまうため、あっけらかんとできるからだ。周囲の含みをよそに、本人は飄々としている。
そのような意味で、本作はとても観ていて気持ちよかった。
しかし一方で、
ロードムービーにしては情報が多く、ややうるさい感じがした。うるさい割に、一つ一つの映像が非常にゆっくりなので、絵に飽きる場面がたびたびあった。
特にクライマックスシーンの長回し。
バックショットなので表情を汲み取ることもできず、絵がわりのない後ろ姿を何分も見続ける。いつになったら次にいくのかとじれてくる。
ロードムービーに、多くのアイデアと展開を盛り込みすぎている印象だったけど、卒業制作とは到底思えないハイクオリティな作品だった。画面のクオリティだけなら、ジム・ジャームッシュの卒業制作『パーマネント・バケーション』をゆうに超えるだろう。
他の作品を続けて観てみよう。