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渇望のpikaのレビュー・感想・評価

渇望(1949年製作の映画)
4.5
丁寧に描けば2時間前後はかかりそうな物語を怒涛の省略により85分で表現しきったベルイマンの初期作。
台詞一つで説明し、カットの切り替えで数年ジャンプしたり国を跨いだりフォーカスする人物を切り替えたりと集中していても置いていかれるスピード感。不親切なのではなく無駄がない演出なので瞬間的に理解できればめちゃ濃厚。ちなみに私は何度か巻き戻した。笑

イタリアへ旅行したある夫婦が戦後間もないドイツを経由しスウェーデンへと帰る道中、「人生に過去あり」というように現在を構成する人物の過去を描きながら夫婦というものの本質をあぶり出す。

夫に対し理不尽過ぎる辛辣な態度を見せる妻と、四六時中マシンガントークでグチグチしては手間をかける妻を甲斐甲斐しく世話する夫。
何故そのようになったのか、妻の人生を一変した過去の出来事と夫の人生観を決めた元カノの現在を交互に映し出し、夫婦であることとはどういうことなのか、愛情と孤独の狭間に揺れる男女の虚無感と人生の無常観を、精神を抉るようなシーンと印象的なカットの連続で描き出す。

「生と死」「愛憎」「神の沈黙」などを描いているベルイマンの初期作は「愛と孤独」をテーマにしているのか。
愛に満ちた時期を過ぎ、不満を抱えて現実に満足できなくなった夫婦の間にある絆は「愛や情」なんて生易しいものではなく、そこにあるのは「孤独からの逃避」なのだろうか。
ちなみにベルイマン31歳の作品。凄すぎ・・・
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