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アギーレ/神の怒りのTSのレビュー・感想・評価

アギーレ/神の怒り(1972年製作の映画)
3.7
【黄金郷エルドラドを目指して】
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監督:ヴェルナー・ヘルツォーク
製作国:西ドイツ
ジャンル:歴史
収録時間:93分
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発掘良品第36弾
世界史の好きな方は見ておいても良いかもしれません。新大陸における、スペイン勢力によるコンキスタドールを描いたもので、その中でもゴンサロ・ピサロ軍に焦点をあてています。中でも、黄金郷エルドラドが森林奥地にあると信じたアギーレがピサロ達を裏切り、エルドラドを探すというのがメインになっています。世界史では、コンキスタドールとしてコルテスがアステカ帝国を、フランシスコ・ピサロがインカ帝国を滅ぼす程度しか覚えないため、ここまで突っ込んだ内容は歴史好きには興味深いと言えます。なお、今作に出てくるピサロは「ゴンサロ・ピサロ」であり、フランシスコ・ピサロは彼の兄だそうです。二人でインカ帝国を滅ぼしたという事で、これは知らなかった情報です。勉強になりました。

1560年、エクアドルのキトを離れてアンデス山脈に向かっていたピサロ軍。その中で、ロペ・デ・アギーレはピサロ達を裏切り独断で黄金郷エルドラドを探そうとするのだが。。

黄金郷を探すというのは、歴史的によく行われていたようで、かの有名なマチュピチュも、ハイラム・ビンガムが伝説の都市ビルカバンバを探している最中に偶然発見されたものです。残念ながらエルドラドは未だに発見されておらず、伝説の都であったとされています。現代の目線でいうと、冷めた見解を示せますが、16世紀の大航海時代となると、この世がまだ球体なのかも人々にとっては不確かな時代でありました。故に、森林の奥地にそのような黄金郷があると考えてしまうのは寧ろ普通であり、欲望に満ち溢れてはいますがどことなくロマンがあります。

しかし、その欲望に負けて森林の奥地に進んでしまった結果、凄惨な事態に陥ってしまいます。全く先の見えない旅、人を食すと思しき気味が悪い先住民達がいるなど不安は募るばかりです。アギーレは矮小な筏の上で独裁者の如く、部下達を指導していきますが部下達の士気は下がるばかり。森林から飛んでくる毒矢に刺さり、確実に減っていく部下達。その混沌ぶりには息を思わず飲んでしまいます。

どこまで史実に則っているかはわかりませんが、少なくともアギーレという人物は実在した模様。コンキスタドールは征服者の意味でして、そのイメージはあまり良くないですが、彼らも征服するにあたり相当な苦労をしたようです。特に、先住民達に改宗をさせるのは至難の技のようです。このように、欧州が先住民達を征服していく様が描かれていますが、決して美談として描いていないのがヘルツォーク監督らしいと感じました。

タイトルにもある通り、彼らはその傲慢さ故に「神の怒り」を受けたのでしょう。正直に言うと、やや地味な作品ではありますが世界史好きには考えさせられる一品であると思われます。

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