マヒロ

眠れる森の美女のマヒロのレビュー・感想・評価

眠れる森の美女(1959年製作の映画)
3.5
ある王国に産まれた王女・オーロラ姫は、その生誕祭で悪い魔女のマレフィセントに呪いをかけられ、16歳の誕生日に糸車の針で指を刺し命を落とすことになってしまう。そんな彼女を守るため、三人の妖精に連れられたオーロラは身分を隠して森の奥深くで暮らしていたが、あることをきっかけにマレフィセントに居場所がバレてしまう……というお話。

マレフィセントの使う緑色の炎をはじめとした淡くてどこか妖しげな色遣いや、絵画のような端正に書き込まれた背景など、ただクオリティの高いアニメーションという枠を超えて芸術的な美しさすらある映像が素晴らしかった。色の感じは後の『アナ雪2』を彷彿とさせるところもあるかも。
オーロラ姫のキャラ造形も、リアルな人物をトレースしたような見た目の『白雪姫』や『シンデレラ』から、アニメ世界に馴染むような目のぱっちりとしたデザインになっていて、ここにも進化を感じさせられる。

ストーリー的にはそんなにサプライズがあるようなものではなく、姫が森で匿われる→悪女に見つかり昏睡状態に→王子様のお陰で助かってめでたしめでたし、というざっくりした流れはまんま白雪姫。
『白雪姫』でも一番キャラが立っていたのは七人の小人たちだったけど、今作でも主人公レベルで目立つのはオーロラの保護者となる三人のおばさん妖精たち。オーロラが「眠れる美女」になるまでは意外と長くて、映画の3分の2過ぎたくらいでようやく眠るのでタイトルの割には起きてるんだけど、それでも画面に映りっぱなしなのはこのおばちゃん達で、おっちょこちょいなところがある三人のドタバタ劇を結構長いこと見せられる。
これはこの時期のプリンセスものが大体そうだが、王子と姫の話では膨らませられないからなのか、やたらとお供のコメディリリーフが目立ってしまい肝心の2人の影が薄くなってしまうという問題がある。特に王子とか各作品の人をシャッフルされても気づかなそうなレベルで印象に残らず、この「役割を演じるためだけの中身のないキャラクター」って時代を感じさせられる。
この後のいわゆるディズニープリンセスものは、なんと30年後の『リトル・マーメイド』まで作られないらしいが、アリエルの行動を考えるだけでもだいぶブラッシュアップされたんだなと思う。

前述の作画の美しさや、クライマックスのドラゴンvs剣と盾の戦いという王道まっしぐらなバトルシーンのアツさなど、良いところは結構あったので、ストーリーでもっと驚ける面があったら良かったなと思った。

(2021.239)
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