サマセット7

X-メンのサマセット7のレビュー・感想・評価

X-メン(2000年製作の映画)
3.7
監督は「ユージュアル・サスペクツ」「ワルキューレ」のブライアン・シンガー。
主演は「レ・ミゼラブル」「グレイテスト・ショーマン」のヒュー・ジャックマン。

近未来、人類の一部は特別変異により超能力を獲得。ミュータントと呼ばれ、旧人類からの差別と迫害の対象となっていた。
自己復元能力、超金属の爪と骨格、優れた感覚などの能力を持つミュータント、ウルヴァリンことローガン(ジャックマン)は、失われた記憶を求めて彷徨う中で、ローグというミュータントの少女と出会う。
行きがかり上彼女と同行することになったローガンは、獣のような大男のミュータント・セイバートゥースによる襲撃を受ける。
危地を救ったのは、サイクロップスとストームと名乗る2人組男女のミュータントだった。
彼らはプロフェッサーX率いる穏健派ミュータントのチーム「X-MEN」に属しており、強力な能力を持つマグニートーに率いられる過激派ミュータントのチーム「ブラザーフッド」と対立関係にあるというのだが…。

アメコミを原作とする実写映画化作品。
原作は、スーパーマンやバットマンを擁するDCコミックと並ぶ、アメコミ界の二代巨頭であるマーヴェルコミックの看板ヒーロー・シリーズ。
マーヴェルコミックは、他にもスパイダーマン、アイアンマン、キャプテンアメリカなどのヒーローを抱えるが、今作は、その中でもブレイドと並び最初期に実写映画化された作品である。
世界で2億9000万ドルを超えるヒットを達成。
評論家、一般層共に、一定の支持を集めている。
オーストラリア出身の俳優ヒュー・ジャックマンの出世作として知られる。

ストーリーは、ミュータントが人類から差別を受けている近未来において、人類との共存を目指すプロフェッサーX率いるX-MENと、人類への反抗を志すマグニートー率いるブラザーフッドの戦いに、主人公のウルヴァリンが巻き込まれていく、というもの。

第一作ということで、世界観やキャラクターのイントロダクション的な要素が強い。
その分、軸となるストーリーはかなりシンプルで、テンポがいい反面、割とあっさりと進んでいく。

そんな今作の見どころは、個性的かつ強力な能力を持ったミュータントたちのキャラクター描写に尽きるだろう。
ウルヴァリン、プロフェッサーX、サイクロップス、ストーム、ジーン・グレイ、ローグ、アイスマン…。
マグニートー、ミスティーク、セイバートゥース、トード…。
どいつもこいつも面白い。

特に忘れ難いのは、主人公ウルヴァリン、最強の敵マグニートー、そして、変身能力を活かして暗躍する女性のミュータント、ミスティークだろうか。
ヒュー・ジャックマンの当たり役、ウルヴァリンは、野生的な雰囲気をムンムン出しつつ、必要な時には紳士的に振る舞う。
能力的には、不死身で折れない骨と爪を持つ、というかなり地味なものだが、それだけに、X-MEN側の肉体を駆使したアクションを一身に担う。

ロードオブザリング・シリーズでのガンダルフ役で知られるイアン・マッケランは、今作最強の敵、マグニートーを演じる。
その能力は、磁力を自在に操る、というものであり、金属が十分に存在する場所では、無敵。骨格が金属であるウルヴァリンにとっては天敵に当たる。
また、高い知能と過激な思想をも有しており、対立するプロフェッサーXとは、過去に因縁を持つ。
強敵感がビンビンでており、シーンに登場するとこちらのテンションも上がるキャラクターだ。

ミスティークは、ある意味で今作で最も活躍するキャラクター。
情報戦での変身能力の強さを見せつける。
紅い髪に蒼い肌という外見や終盤のアクションシーンでの身のこなしも印象的だ。

超能力の演出やアクションの演技も時代なりに健闘している。さすがに最新のアメコミヒーローものの高度なアクションやCGには及ばないが、そんな比較に意味はあるまい。
トードの長い舌を使ったアクロバティックな動きや、ストームの能力のスケールの大きさなど、色々と楽しめる。

今作のテーマは、差別の克服、であろうか。
ローグの心情描写、議員の気持ちの揺れ動き、マグニートーの企みなどが象徴的。
今作自体が、被差別対象のミュータント同士が、融和派と対決派に分かれて互いに争う、という話なので、テーマはわかりやすい。
なお、プロフェッサーXはマーティ・ルーサー・キング牧師、マグニートーはマルコムXという、アフリカ系アメリカ人の差別に対する対照的な指導者のスタンスに当て嵌め可能、というのは知られた話だろう。

今作に対する最大の批判は、どこか盛り上がりに欠ける、という点か。
たしかに、規格外の超人たちが多数登場するわりに、バトルの規模は大きいとは言えないかもしれない。
今作はあくまでキャラクターと世界観のイントロダクションとして見るのが吉か。
次作でいかに改善されたかが、シリーズものとしての注目ポイントになる。

記念すべきアメコミヒーローものシリーズ第一作にして、ヒュー・ジャックマンの出世作。
シリーズは、スピンオフも合わせると多数ある。
旧三部作、新三部作、ダークフェニックス、ウルヴァリンの単独スピンオフ三部作、デッドプールの2作で、計12作。立派なものだ。
同じマーヴェルだが、MCUの世界観とは完全に独立した、X-MENユニバースと言うべきもの。
作品ごとの評価の浮き沈みの激しいシリーズと言われるが、今作での掴みは、個人的には十分。
順に見ていきたい。