nt708

E.T.のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

E.T.(1982年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

この世界においてやはり子供は無力である。しかし、子供は子供にしか持ちえない不思議な力を持っている。大人はどれだけ子供のことを見くびっていたのだろう。もしか、本作は子供よりも大人に見てほしいという想いの下で作られたのではないだろうか。

さらにこの映画をスピルバーグのアイデンティティと照らし合わせると別の解釈ができるように思う。彼は言うまでもなくユダヤ人の血を継いでおり、ユダヤ人が過去に受けた迫害が本作にも少なからず影響を及ぼしているのは間違いのないように思う。例えば、E.T.をユダヤ人の子供、人間の子供をドイツ人の子供と置き換えると本作で伝えたかったことがよりわかる気がする。つまり、あのとき救われなかった子を救ってやりたかったという反省、あるいはあの時代にも人種に関係なく心でつながっている子供たちがたくさんいたのではという希望をこの映画は伝えたかったのだと考える。

これだけの名作だ。私も実際に感動したが、映画として完璧かと言われると、改善する余地もあるように思う。その一例が大人を子供の敵ではなく、味方として描いて欲しかった点である。この映画は子供以上に大人のための映画であるという主張と矛盾しているかもしれないが、本作が子供のための映画でもあることを考えるとひとりぐらい子供の声を信じる大人が出てきてもよかったのではないだろうか。確かに手術をする人たちは子供の声は聞かずとも子供と同じようにE.T.を助けようとしているし、両親も最後は子供に寄り添う結末になったが、本当に最後の最後になるまで子供たちの声に耳を傾けようとしなかった。子供は無力であると決めつけ、E.T.に指一本触れさせようとしなかった。何もできなかったのは大人だったにもかかわらず、、このように、本作で描かれた大人の変化が急だったことが私が唯一この映画で気に入らなかった点である。子供たちが必死になる姿を見て、少しずつで良いから大人も変わっていってほしかった。
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