てる

アダプション/ある母と娘の記録のてるのレビュー・感想・評価

3.7

名作映画を観よう、どうせならレンタルや配信でも観れないような作品を観よう、そう思い立ってこの作品を観賞することにした。
作品も監督も知らなかった。ハンガリーがどんな国でどんな文化なのかも知らないし、ハンガリー映画って観たことあるかどうかもわからない。ただベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞したというだけでこの作品を選んだ。

面白いかどうかはわからない。
ただ、非常に魅力的な作品だということは間違いない。
ヨリの画が多い、しかもほぼほぼ一連で撮っていた。芝居をカットなしに一連で撮影すると、役者の独特な間がそのままダイレクトに映像に残る。それがドキュメンタリーのようで、それがまた良い味を出していた。
フィルムで撮っているわけだし、カメラマンはさぞ辛かったことだろうが、ただ、その頑張りは映像に残っている。
アングルの切り方が上手い。どの画も引き込まれるような魅力があった。
とはいえ、それは被写体が良いってのもある。アンナ美人だったねー。ヨリで一生観てられる。とにかく、美人を撮るのが上手いカメラマンだった。

内容も良かった。
強い女性の生き方というのが、克明に鮮明に描かれていた。たった一人でこれから赤ん坊を育てようとする彼女の姿勢は物凄い強烈に思えた。
きっとアンナを無事に結婚させられたことによって、色んなことが吹っ切れたんだろうなぁ。きっとあの男ともキレイさっぱり別れるんだろうなぁ。
でも、個人的にはあの赤ん坊がまともに育つかどうかは怪しいとは思うのだけど。

子どもがほしいって感情は人それぞれだとは思う。だけど、これって時代や国、文化ってのもあるのかなぁ。というのも、今の時代は多くの物が揃っているし、多様性が重んじられているから、子どもを育てたいという感情も今の時代で生きていたなら、違う方向に発散していたのではないかと思うのだ。
もちろん彼女は自立している。だからこそ子どもを育てたいと考えられるわけだけど、現実的には彼女のような環境でシングルマザーをやっていくのは経済的にも肉体的にも辛いはずだ。
それでもなお子どもがほしいってのは、私には物凄く強烈に思えた。もちろん個人差はあると思うが、これは女性ならではの感情の動きのような気がしてならない。

あと、よくわからないってのは最後にアンナと青年が喧嘩していた。それは一体どのような表現だったのだろうか? あんなに切望していた結婚なのに、辛そうに涙を流していた。セリフがなかったので、想像するしかないけど、やはり結婚ってのは難しいんだよってのが言いたいのかな。結婚式の途中でそんなんだったら未来は暗い。
そのビターな終わり方に疑問を抱いた。
てる

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