ねーね

生きてこそのねーねのレビュー・感想・評価

生きてこそ(1993年製作の映画)
3.4
『雪山の絆』を観た流れで、イーサン・ホーク主演のこちらも鑑賞。
全く同じ事件を取り扱っているのに、やはり三者三様で演出の仕方も異なるのが面白かった。

前者は途中で亡くなった青年の独白方式だったから、どこか第三者的で過去を振り返っているような印象があった。
基本的にずっと暗い画が続き、遭難中に感じていた「恐怖」にフォーカスしていた感じ。
母国語の俳優を使っていたことからも、リアリティを追求していたことがわかる。
事故のシーンは当然ながらバヨナ監督版の方が現実味があるし、画も広大で美しいけど、フランク・マーシャル版の90年代らしい映像がわたしは好き。

「生きてこそ」は、「雪山の絆」ではわからなかった細かい描写も多く、現場の空気感がより理解しやすかった。
そりに乗ってはしゃいだり、仲間同士でふざけあったりと明るいシーンも随所差し込まれ、生命力に溢れていた。
犠牲者の十字架を持ち帰るに至ったシーンや、人肉を食べるに至った葛藤、仲間たちのチームワーク、ハビエルとリリアナの愛情もよりわかりやすく描かれていた。
だからこそ感情移入できたところもあるが、それは「生きてこそ」がよくもわるくもハリウッドエンタメ演出に振り切っていたからなのかもしれない。
そもそもイーサン・ホーク主演の時点でハリウッド感はある。
主人公が、いわゆる英雄ともいわれるナンドに設定されていた時点でそれは感じる。
だって、実際はどれだけの恐怖だったかなんて測り知れないのだから。

いずれにしても「生きてこそ」というのは秀逸なタイトルだ。
まさに、生きてこその人生なのだから。
わたしはキリスト教徒ではないけど、キリスト教系の学校の出身なので、「神に祈る」気持ちは理解できるのだが、こういうのを見てしまうと「神なんていないな」と思わざるを得ない。
私は、生還したみんなのことを心の底から尊敬するし、賞賛したい。

(原作本が読みたかったのだが、もう廃盤らしく全然出回っていなくてショック)
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