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言えない秘密のemilyのレビュー・感想・評価

言えない秘密(2007年製作の映画)
3.7
ピアノ科に転校してきたシャンルンは、古いピアノを弾いているシャオユーとである。一瞬にて彼女の虜になり、二人は徐々に距離を縮めていく。しかしシャオユーには持病の喘息があり、あまり学校にも来られず、友達も一人もいない。シャンルンに想いを寄せるチンイーと二人でいるところを目撃してしまったシャオユーは、それ以来学校に顔を出さなくなった・・

アンティーク感漂う美しい音楽室
キラキラした雨上がりの透明感のある、青っぽい映像
恋の始まるを描写する、甘酸っぱい香りが漂ってきそうなグイ・ルンメイ の絶対的透明感のか細い美しさ。
どれもとってもため息が出るほど美しい青春時代のきらびやかな描写に、それに拍車をかけるように全編に流れるピアノの調べ。

本作はジェイ・チョウが主演だけでなく、音楽、脚本、そうして初監督を務める意欲作であり、まさに彼のやりたい事がすべて詰まった作品になっている。

もちろんミュージシャンでもあるジェイ・チョウは余す事なくピアノの調べとそのテクニックを見せつけてくれる。音楽に言葉など必要ない、音楽でのバトルや会話、そこから広がる幻想的な世界や、心情が音にのる描写も繊細に丁寧に描かれており、ラブストーリーだけでなく、音の掛け合いも楽しめる。

ただ音を綴るだけでなく、演奏することの楽しさ、そこから広がる世界の深さをしっかり映像として観客に伝えようとするのがわかる。その音に身を任せると、自然とリズムを取ったり、笑顔になり、一緒に楽しんでる自分がいる事に気が付く。
それぐらい音楽の占める割合が高く、そうして描き方にもジェイ・チョウの音に対する熱意を感じられる。

ラブストーリにセピア色の層が深みをます。甘酸っぱいラブストーリーに時間軸を超えたファンタジー要素がのり、物語は後半にかけ変貌を遂げる。言えない秘密が徐々に明かされていくのだ。前半のキラキラした恋愛物語から一遍し、ラストに向かっての畳みかけもうまくスリリングに観客を魅了し、ラストには切ないが心地良い余韻を残してくれる。

なによりグイ・ルンメイの消えそうな透明感と、時折見せる笑顔の美しさに彼女の魅力を余すことなく堪能することができる作品となっている。
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