Ryu

東京暮色のRyuのレビュー・感想・評価

東京暮色(1957年製作の映画)
3.8
銀行で働く杉山周吉は次女の明子と2人で暮らしていたが、長女の孝子が夫との折り合いが悪く、幼い娘を連れて実家へ戻ってきていた。学生の明子は不良グループとつきあうようになり、その中の一人 木村の子を密かに身篭っていた。そんな時、明子はふとしたことから、家族を捨てた母の秘密を知ることになる。

名匠 小津安二郎監督の最後の白黒作品。
小津安二郎にしては、かなり暗い内容になっております。内容もさることながら、夜のシーンも多くて画面も暗め、有馬稲子は終始笑うことがない。これらがその暗い作風に拍車をかけます。
ジェームズ・ディーンの「エデンの東」の小津的な翻案とされているそうで、確かに親のことで悩み、堕ちていってしまう様は重なりますね。
小津作品の中ではめちゃくちゃ暗くて、後味もまぁ悪いんですが、やはり小津安二郎はそれだけでは終わりません。構図は暗いながらも美しさを感じますし、親子や兄弟、家族の形をちゃんと考えられます。ラストの長女の選択は、大変だと思うけど、微かな希望も感じられました。この選択をできることは“親”として非常に大切なことだと思います。
今まで観てきた小津作品は、人生や家族っていいなぁと思える温かみを存分に味わえるものが多かったですが、今作では人生の陰の部分を強く感じました。観てて気持ちの良いものではありませんでしたが、小津節はしっかりと炸裂しており、非常に趣がある作品でした。
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