きゅうげん

箪笥<たんす>のきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

箪笥<たんす>(2003年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

シュワちゃん復帰作『ラスト・スタンド』やリメイク版『人狼』のキム・ジウン監督が、韓国の古典的怪談を翻案したサイコ・ホラー。

視点人物が姉妹と後妻の間で偏らないため、“継母いじめ”もののハズなのに後妻の苦悩も垣間見え、被害者然とするハズの主人公ふたりにも“不気味な姉妹”ものっぽさがあり、アンビバレントな恐怖感を覚えます。
恐怖表現そのものをみても、夢に現れる黒ずくめの幽霊や血みどろの少女など“家系ホラー”的演出から、信用できない語り手的なサイコ・スリラー味ある人物描写まで、どれも秀逸です。
それに、継母と姉のトゲある会話や空気感最悪の食事会シーンなど、等身大なイヤさ加減も絶妙。
さらに「気づいてくれ、あいつはもう……」展開で、亡き妹はまだしも仮想敵の継母さえも内面化しているオチは意外性◎。
真相が明らかとなるラストの回想は、目と鼻の先で実母が自殺・妹が圧死しているのに気付かず口喧嘩→家出、という悲痛で壮絶な内容でやるせなくってツラいです……。

ただ、「頭の中」オチに収斂したために前述のような、恐怖と綿密につながったバランス感覚の良い人間ドラマは極論的に意味を失ってしまいますし、くわえていえば、「同じタイミングで生理が始まる→同一人物である匂わせ」や「発作を起こした女性が目撃する幽霊」など、感情的な現象と女性性の紐付けには、まぁまぁ恣意的なジェンダーの利用が感じられなくもないですね。
もっと親父が断罪されるべき内容ですし。

とにもかくにも、本作のおかげで、‘00s前後の黒沢清フォロワー感あるしっとりアジアンホラーが、自分はわりと好物なんだと気づけました。