三畳

美しき冒険旅行の三畳のレビュー・感想・評価

美しき冒険旅行(1971年製作の映画)
4.6
文明も言語もまるで異なる世界線でそれらに頼らず心が結ばれる話、かと思ったらもっと圧倒的なものを突きつけられる話だった。生きるか死ぬか状態に置かれると、男より女という生き物の方が感情の回路を切断して後回しにできる気がする。それも本能。

赤茶けた土やゴツゴツした岩肌を制服で歩いてく段階では、その様子は大地に受け入れられているとは言い難い、効果的なBGM。でも中盤から水や植物が豊かなエリアも現れて、過酷なりに拒まれもせず、美しい池で泳ぐシーンではようやく自然の一部として含まれた、って感じ。

もっとも、アボリジニの子とイギリスの子とでは同じ環境下でも、用意された風習/事故という点でサバイバル度が違う。アボリジニの子は自然の中で生きる喜びをめいっぱい感じているような。女の子は淡々、守るべき弟を前にお母さんみたい。
だけどなにも見ていない感じていないわけはない14歳だったというのがラストシーンかな。
その年頃に強烈な体験をすると、”ふとしたときに思い出して感傷に浸る”とかじゃなくて、全部の下敷きに刻まれるというか、見え方ごと変わって基礎構造が書き換えられてしまうという気がするから、それを映像で如実に表してたと思う。
お父さんが死んだシーンや、死体や、アボリジニ人たちが車に群がってるカットがたびたび割り込むのも、”思っている””見えている”んではなくてただその事実があるってことが女の子を形成している。

他にもそういったいろんなことが、映像によって、頭で解釈するよりも先に分かってしまうような実に素晴らしい映画。
カルトだエルトポだ言われていたので期待して見たらどちらかといえばブンミおじさんのような感銘を受けた。
三畳

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