亘

招かれざる客の亘のレビュー・感想・評価

招かれざる客(1967年製作の映画)
3.8
ドレイトン家の一人娘ジョアナは何の予告もなしに実家へ帰る。彼女は10日ほど前に出会った黒人医師ジョンと結婚するのだという。ジョアナの両親が、急な事態に驚きを隠しきれない一方2人はスイスでの挙式を企画し、ジョンの両親の夕食へ招待する。

1960年代、白人と黒人の結婚がまだ一般的ではなかった時代の結婚観をめぐる一家の騒動を描いた作品。ジョンはハワイ大学で教鞭をとる優秀な医師でしかも物腰も柔らかいし謙虚な好青年。まさに結婚相手として申し分ない人材。でも、まだ時代が早いのか周囲の人々は少し訝しげに2人を見る。もちろん中には2人を応援する人もいるけど、いつしか賛成派と反対派に2分されてしまう。

[賛成派]ライアン神父:初めから2人を応援。難しい対立とはわかりながらも、平等や2人の愛を信じる。ジョアナの母:初めは驚いたようだけど、ジョアナの幸せそうな様子を見て態度を変える。ジョンの母:ジョアナの母と意気投合。2人の仲を信じる。

[反対派]ジョアナの父:サンフランシスコの新聞社の編集長でリベラルな考えの持ち主。だが言うは易く行うは難しなのか、どうも偏見を捨てきれないよう。ジョンの父:極めて強硬に反対。家政婦テイリー:自身も黒人だけど「気取った黒人は嫌い」とジョンを疑う。

ジョアナは天真爛漫で、勢いで結婚式のプランまで立てたりジョンの両親を招待する一方、慎重派のジョンは彼女の父親との折衝を迫られる。ジョアナは楽天的すぎるようにも見えるけど、彼女の明るさがあってこそ2人の父親に屈せず対決できたんじゃないかなと思う。またジョンがしっかりしているから余計に父親たちは正論で反論がしにくくなる。

ジョアナの父はリベラル派の新聞社の編集長だし、正論を理解するところは理解する。ただ厄介なのは古風で頑固なジョンの父で、説得するのが難しそう。賛成派と反対派が一斉に対決したらきっと反対派が力で押し切りそうなところだけど、小規模にゲリラ戦を行ったからこそ両派がほぼ対等に渡り合えたような気がする。父親たちという強敵をどう賛成派が攻略するのか、フライト時間が迫る中での緊張は引き込まれた。

印象に残ったシーン:ジョアナがジョンを両親に紹介するシーン。両家の母親、父親がそれぞれ意思確認をするシーン。ジョアナの父が皆の前で演説するシーン。

余談
原題"Guess Who's Coming to Dinner"は「夕食に誰が来るか当ててみて」という意味で、ジョアナの母クリスティーナがジョンの両親が夕食に来ることを夫に伝えたセリフです。
亘