矢嶋

ハワーズ・エンドの矢嶋のレビュー・感想・評価

ハワーズ・エンド(1992年製作の映画)
3.7
簡単に言えば俗物じじいとヒステリー娘のせいで拗れた結婚・相続問題。

美しい自然や邸宅、クラシカルで品格のある衣装や美術はそれだけで見る価値がある。終始、まさに英国文学といった雰囲気を味わえるのが魅力。

二つの家族に多く見られる差異、そして何よりもレナードの状況から、当時のイギリスが階級社会であったことを伺うことができる。
数々のトラブル、行き違いを経て最終的に収まるべき所へ収まっている。世代交代も含めて色々なことが起きた挙句、不思議とウィルコックス家の人々が拒否した結末に至る…と、展開は考えられているように感じた。

途中まではヘレンがどうしようもない奴だと思った。ヘンリーが俗物なのは理解できるが、いくらなんでも悪い方向へ行動力がありすぎる。そもそもレナードへ直接伝えたのは自分と姉だし。ヘンリーの「貧乏人に同情するな」はスタンスとしては正しく、中途半端なことしても金持ちの気まぐれにしかならず、これはそっくりヘレンに当てはまる。ていうか、傘泥棒の常習犯ってなんだよ…

上記の通りむしろヘンリーに同情しているくらいだったが、後半に自分の愛人問題は棚に上げてヘレンを扱ったことでどっちもどっちだな…となった。
ただ、雰囲気作りが上手いために主要人物糞ばっかだな…みたいな感想にはあまりならない。雰囲気映画みたいな言葉は批判的に用いられるが、雰囲気を作れることは結構重要だ。

気になる点としては、二つの家族+レナード夫婦と登場人物が最初から多い上に各人をあまり掘り下げられず、名前や性格を覚えられない。
そのせいもあってかヘンリーがマーガレットに求婚したのは全く理解できなかった。そんなきっかけが描かれていたとは思えない。
チャールズが最後あそこまで激昂する理由もよく分からない。彼がそこまでヘレンに入れ込むとは思えないのだが…総じて、起こっている事象に納得ができない場面はちょこちょこあった。

画的な魅力は抜群だし、展開も魅力的。一方で、小説を映画一本に落とし込んだためか、ディテールを欠いているように思えたのがやや残念だった。
矢嶋

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