Kachi

となりのトトロのKachiのレビュー・感想・評価

となりのトトロ(1988年製作の映画)
4.2
幼少期に何度観たか分からない本作。ただ、宮崎駿からすると(養老孟司との対談をまとめた『虫の眼、アニ眼』より)トトロを何回も観たという親御さんの声にドキッとするという。そんなものは、年に1回観ればよいのだ。なんて、作り手でありながら平気で言っていた。

では、なぜ現代の子ども(と言っても、20年前だが)がトトロに魅了されるのか。それは、となりのトトロの映像が失われつつある田園風景であり、そこに無意識的に懐かしいと思ってしまうからであろう。

物語は、草壁家が田舎に引っ越しをする。そこで子どもたちは不思議な体験をする(まっくろくろすけやトトロと出会う)。お母さんが入院する病院から電報が入り、母を心配するメイが病院に向かうも迷子になる。迷子のメイを姉さつきが探す。ネコバスに乗ってメイを見つけ、母にとうもろこしを届けてめでたしめでたし。エンドロールでは、母の回復が示される。このシンプルなプロットの中に、小さな気づきや郷愁が詰まっている。

この物語において、さつきは理想的な少女として描かれているし、メイも天真爛漫な良い子だ。お父さんも、子ども想いで懐の深い男性として描かれており、草壁家に特別な何かがあるわけではない。にもかかわらず、ついトトロを観てしまうのは、そんな平凡さがもはや失われているということの証左なのかもしれない。
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