竜平

メメントの竜平のレビュー・感想・評価

メメント(2000年製作の映画)
4.7
妻の死をキッカケに、その瞬間以降から記憶が10分しか持たなくなってしまった男。その復讐に囚われた姿を「記憶」を題材にして描く新感覚スリラー映画。

今作でまず特筆すべきはその独特なストーリー構成。逆再生のように結末から遡っていく「カラー」のシーンと、通常の時間軸でやがてカラーのほうに交わっていく「モノクロ」のシーン、この二つを交互に見せていくという展開。初めに言っておけることとして、今作はかなり難解で入り組んだ内容ながらそれでも設定やらストーリーやら劇中で諸々説明しようとしてくれるもんで、予備知識やあらすじ等を頭に入れてなくても楽しめるんじゃないかなと。我こそは玄人、ってな人は本当に真っさらな状態で挑戦してみてもいいかも。

ひとつの結末がすでに描かれてしまう冒頭、そこから明かされていくそこまでの経緯、出会う人々や判明する事実の数々。記憶が持たない主人公と一緒になって見ているこっちも記憶が曖昧になって、やがては混乱していく。監督クリストファー・ノーランはこれを意図的にやってるとのことで、術中にハマって物語に内容に、そして待ち受ける「もうひとつ」の結末にも頭がこんがらがること請け合い。頭を使う系が苦手ってな人にはそもそも向かない映画と言えるかも。個人的にも序盤はちゃんと追えるんだけど、何度見ても途中からわけがわからなくなる。でもそこにあるのは何度も見返したくなるようなおもしろさと、張り巡らされた伏線と意味深なシーンを繋ぎ合わせていく謎解き的な楽しさ。更に今作の推したいところとして、複雑なストーリー構成の中に嘘や思惑といった人間のわるい部分が絡んでくるという点。保険調査員という主人公の元々ある疑り深い性格も手伝って、登場人物すべてをこちらも終始疑ってしまう。読めない展開がとにかく見事。

前述したように結末に特化した映画ではないから何度見てもわりと楽しめる。で、ある程度事実は明らかになるけど、じつは完全にスッキリできるわけでもなかったり。見終えた後にも謎がいくつか残るような造り、これもきっとわざとなんじゃないかなと。こんな映画なかなかない。改めて見て思うのが、これはなかなか狂気的でそこらのホラーよりもずっと怖い内容。議論がすこぶる楽しい映画、とまぁここらへんでやめておこう。集中力のあるときにぜひ。そしてもし今作にハマれたとしたら、きっとあなたはもうノーラン作品の虜。ジョン・Gって恐らく日本人で例えるとS・タロウみたいなもん。
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