映画大好きそーやさん

RENT/レントの映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

RENT/レント(2005年製作の映画)
3.6
525,600分の計り方。
久しぶりのミュージカル映画かつ、YouTuberや俳優として活躍するかいばしらさんの好きな映画ということで、GEOで見つけて即借り、翌日鑑賞というスピード感で観たのですが、個人的にはあまり刺さらなかったです。
ミュージカル、群像劇、マイノリティーの葛藤と、詰め込まれている要素が良かっただけに残念さが否めませんでした。
ハマらなかった点から挙げていきますと、物語の8割が歌唱シーンで進んでいくため、恋愛の模様や心情の変化を追っていくのが難しく、とにかく感情移入しづらかったです。
ミュージカルにおける恋愛はドラマパートがあってこそ、気持ちの高まりや歌唱時のカタルシスを演出できると思っているのですが、本作は何よりも優先順位が高く設定された歌唱シーンによって、キャラクターを蔑ろにしながらドラマを消費している感覚が常に付きまとっていました。(エンジェルの終盤の描写などはもっと丁寧に見せてほしかったですね。素敵なキャラクターだっただけに、何とも腑に落ちないまま終わってしまった印象でした)
特に顕著であったのが恋愛周りの描写であっただけで、他にもキャラクターの心情変化において重要な事柄をサラッと流して歌唱シーンに入ってしまう(もしくはバックで楽曲を流しながら説明もなく処理してしまう)ため、映画的な快楽という面で悉く損をしており、後半にいくに従ってどんどんどうでもよさを感じてしまう自分がいました。
8割楽曲ならば、せめて全弾命中であってくれと思うところでしたが、そうも都合のいいこともなく、個人的には滑っているような楽曲が何曲かあって、最低な気分になりました。(悪い意味で1番印象に残っているのは、モーリーンのライブシークエンスです。楽曲を褒めている方々はあのパートも評価しているのでしょうか?少なくとも私にとっては不快感すら覚えるシークエンスでした)
止めどなく歌唱シーンが襲い掛かってくるため、耳が休まる暇がなく、中盤辺りから明らかに物語としてもダレが生まれていたように思います。
逆に、歌っていないシーンが珍しいからか、数少ないドラマパートがやけに静かに感じて、何を観ているんだろうと虚無感に陥る瞬間が何度もありました。
ハマらなかった点はここまでにして、以降は良い点を2つほど書きます。
1つは何と言っても印象に残る楽曲が多いことでしょう。
幾つかは外しているなと思うものもありましたが、基本的にはノリもよく、またミュージカル映画の描写としてセットの高低差を使っていたり、ダンスシークエンスを挿し込んだりと、豊かな映像が観られたのは良かったです。
またもう1つは踏み込み不足感を拭えずとも、貧困やLGBT、エイズ、ドラッグと、扱っているモチーフは(若者の抱える)深刻(な問題)ながら、語り口として常に歌唱するというクッションが挟まれていることで観やすくなっていたと思います。
総じて、歌唱をメインに据えるからこその障害が目立っていたものの、「Seasons of Love」を始めとした素晴らしい楽曲に元気と勇気をもらえる作品でした!