もるがな

グロリアのもるがなのレビュー・感想・評価

グロリア(1980年製作の映画)
4.3
「子供は嫌いなのよ。特にあんたの子はね」

Twitterの#魔女集会で会いましょうのタグで思い出したので視聴。FBIにタレ込んだせいで命を狙われている会計士の男。その妻である親友から子供を押し付けられたマフィアの元情婦グロリアが命がけの逃避行を図る。

件の魔女集会タグは魔女が子供を拾い、子供が成長して魔女を守るというシチュエーションを描いた作品群なのだが、本作はそれとは少し違い、互いの間に信頼関係はほとんどない。親友の頼みで押し付けられたクソガキと、堅気の生活を送ってこなかったくたびれた中年女という組み合わせは、常に破綻しそうな危うさを漂わせている。打算のない関係なので、グロリアが子供を助ける理由は最初からなく、だからこそ子供を奪いに来たマフィア相手に、葛藤の末銃をぶっ放すという彼女の「選択」に心を揺さぶられてしまうのだ。

グロリアを演じるジーナ・ローランズは美しい。トウがたった美人というのが最高である。当時50歳なのだが、綺麗な年の取り方というのはこういうものだということを教えてくれる。

美人というのは生き様を含めての美人である。グロリアはタフだが、美意識も強い。ジーンズやスニーカーという動きやすい服装に着替えるわけでもなく、エマニュエル・ウンガロに身を包み、ヒールで闊歩しながら追っ手から必死に逃げ続ける。風呂の蒸気で服のシワを伸ばし、寝る時はキモノ・ガウンで眠る。常に煙草をくわえながら、男相手でも辛辣な物言いを崩さない。まさにタイトル通り、これはグロリアの映画なのだ。

『レオン』の原型となった映画だが、洗練されたあちらと比べると、やや荒削りな部分は多い。ただ全体的に言葉少なく、表情とシチュエーションで語る本作はまさに本物の熟女ハードボイルドである。個人的にはオチがとても好きな作品で、そこにあるのはタフな一貫性と言いようのない安堵感。母性という言葉では生温い、これこそがグロリアの生き様である。
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