もるがな

ヴァチカンのエクソシストのもるがなのレビュー・感想・評価

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)
4.3
スタイリッシュ祓魔スペクタクルホラー。日本人には馴染みの薄い悪魔祓いを上手くエンタメに昇華させた手腕は見事の一語であり、ラッセル・クロウが演じる茶目っ気のあるエクソシスト、ガブリエーレ・アモルトは、一見すると不良エクソシストのようでいながら、実際は上層部の若い世代の反感を買っている古めかしい伝統的なエクソシストという意外性のあるキャラクターが面白い。

悪魔祓いは荒唐無稽なようでいながら実のところ意外とロジカルな構成になっており、敬虔な信徒でなければ悪魔とは戦えないが、当然潔癖な人間など存在せず、信心深ければ深いほどにその秘匿した罪悪感は弱点になってしまうというせめぎ合いのバランス感がとにかく素晴らしい。また、言葉で堕とそうとしてくる悪魔の奸計や幻術による妨害が主人公の過去エピソードへのフックになっていたり、パートナーの若いエクソシストへの告解から両者の絆が深まり、最終決戦に向けての決意表明になるなど、悪魔祓いにまつわる行動の全てがエンタメの調味料による味付けが完璧なのだ。また、単なるロジカルレスバの側面だけではなく、悪魔の真名や企みを喝破する推理パートは謎解きのミステリとして見ても面白く、情報開示のやり方や展開はとてもスムーズで中弛みすることが一切なかった。

クライマックスの悪魔祓いは壮絶の一語であり、起こりうる事象のほとんどが超能力バトルに片足を突っ込んでいたものの、域悪魔の格が一切落ちなかったのもあってか、人外に信仰心のみだけで戦いを挑む人間という絶望的な構図と緊張感を維持できていたことに感動してしまった。ラジー賞ノミネートとか嘘だろって思う。悪魔の仕業としか思えない。ラッセル・クロウはハマり役だし、次作があるならよりスケールアップして007やM:Iやワイルドスピードみたいにシリーズ化してほしい。
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