竜平

欲望の翼の竜平のレビュー・感想・評価

欲望の翼(1990年製作の映画)
3.7
1960年代の香港を舞台に、数人の男女の人生や愛欲愛憎模様の交わりをしっとり切なく描く。ウォン・カーウァイによるラブストーリー及び群像劇。

突如として始まるとある男女の出会いと交流から、他の男女の話へも枝分かれしていく。登場してくるのは女を振り回す、いや沼らせるタイプのなんというか罪な男、彼が一応主人公と言えるのかな、そんな男を軸にして他にも彼に振り回される、いや沼らされる女性二人と、彼の幼馴染みの男や家の近くを巡回する警官などが登場。人物それぞれの性格やキャラというのが良く立っている印象で、どれもこれも人間味に溢れてる、もちろんいい面だけでなくね。主人公はじつは実の母を知らず孤独やら心の隙間やらを抱えていて、それ故の女性関係や生き方なのかなとか、後々わかってくるあたりもグッとくるところ。今作に於いては男女の恋愛、欲に関するものだけども、人生の「とある瞬間」が忘れられなくなることってあるよなと。最後まで見て、これまた「エモい」作品だなーなんて。交わっては離れて、すれ違いながらなかなか相容れない、けれども繋がってはいる、みたいな。イニャリトゥの『バベル』あたりにもあるような儚さ。いろいろ説明しすぎず、またすべて描き切らない作風、ウォン・カーウァイの映し出し方が今作も非常に秀逸。

ちなみにラストもラストであの俳優扮するギャンブラー風の男が登場するわけだけど、シーン的に他との繋がりが全くなく、これだけマジで謎。どっか見逃したっけ?と思ってしまうほどに。ってことで調べてみたところ、元々今作は前後編の二部作で予定されていたらしく、後編の主人公がこの人物になるはずだったんだけど、なんやかんや前編の分だけしか撮影できず、このままになってるんだとか。で一応カーウァイ作品の『花様年華』と『2046』に繋がってる風でもあるらしい、ってそんな裏設定わかるかーーい。完。
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